茶色い暖簾を払うと迎える、オバチャンの声。
せっかちな空気を感じながら「名物カレーを」とお願いすると、「大盛りにせんでもよろし?」的オバチャンのお訊ねに思わず「で、では、大盛りで」と応えることになる(笑)。
厨房に向けて「インデアン1丁!」などといったオバチャンたちの声が交差します。
品書きには「インデアン」はないけど、「名物カレー」の符丁は「インデアン」なのだね。
それにしても、喋り捲るオバチャンたちの様子が気にかかる。
誰かを厭味交じりに詰るような揶揄するような口調がすっかり身についているところに一種の感慨を覚えます。
意外と時間掛かるのねぇと思い始めたところでお皿の到着。おお、真ん中に生玉子がひとつ、という光景を待っていたところにペア玉子。
大盛りにすると、こうなるってことなンだろね。
まずは、混ぜカレーの部分をそのままいただくと、うん、ぴったりあのレトルトの味と同じ。
Webサイトを見ると、レトルトを販売しているのは「せんば自由軒」のみで、ここ難波「自由軒」ではそんな安易な真似はしないとある。
ということは、新大阪辺りで買って帰って食べたレトルトは「せんば自由軒」のものだったってことになるね。
にもかかわらず、その味と素直に同じに思えるのは、そもそも大した違いがないのか、食べてる方がワカランちんなのか。
玉子ひとつを突き崩して、混ぜカレーをさらにまぜまぜして、スプーンを動かす。
粉っぽさはそのままカレー粉のイメージに結びつく。
確かに玉子の黄身のコクは、シズルなリズムを添えてくれるし、四代目の推奨に従ってウスターソースをちょろっと廻しかければ味わいに輪郭が増す。
それと同時に、カレーに玉子を落として当たり前のことのようにソースをかける所作を初めて目にした時の驚きを思い出す。
そんな食べ方の起源がここ、だったのですね。
大正43年創業のザ・レトロ食堂「自由軒」。当時の、自由民権運動が起きていた時代背景の中で、新しい風を感じられる「自由」という言葉を店名に冠した、という。
「名物カレー」以外にも、「別カレー」「ドライカレー」「ハイシライス」「カレーオムライス」あたりも気に掛かる。
あ、ホールで繰り広げられるオバチャン劇場もまたひとつの名物だったりして(笑)。
「自由軒」難波本店 大阪市中央区難波3-1-34 [Map] 06-6631-5564 http://www.jiyuken.co.jp/
column/02812 @850-