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喫茶・軽食「桃乳舎」で カツハヤシにスパゲティ旨い洋食の店
小網町に、食事もできる昭和レトロな喫茶店があるという。
純喫茶と呼べばいいのか、薫りくゆらす珈琲ありきのお店には意外と足が遠いのだけど、メシ喰えるとあれば(笑)、途端に気になってきます。
220円のコカ・コーラから、色褪せくすんでしまったお食事サンプルを飾ったショーケースが既にいい味出している。
ドアを引き開けると、さも当然に懐かしさに包まれます。滅茶苦茶古くはないにしたって、
橙色カバーのスチール椅子ひとつとっても昭和な味わいを呼んでくれています。
「カレーライス」450円を筆頭に並ぶメニューをじっと睨む。
そして、お冷やのグラスを手にした、テキパキ動くおねえさんに注文を告げると、
「カツハヤシにエッグ!」と張りのある声で奥の厨房にオーダーが通ります。
茶褐色を湛えた「カツハヤシ」白いお皿が、またいい表情。
右脇からスプーンの先を挿し入れて、ご飯とハヤシソースとカツの一片を一緒に載せて、口に運ぶ。
うっほほ~ぃ(笑)。
どこかの本屋のハヤシライスがちゃんちゃら可笑しく思えちゃうような旨さがここにある。
さらさらとしたテクスチャの中に絶妙なコクとたっぷりした旨味を含み、それでいて嫌みがまったくない。
カツの衣に残る、サク~という歯触りとの合わせ技が、なんともニクイのだ。
お醤油要りますか?と訊いて届けてくれたお皿にその醤油を垂らしての、サイドメニュー「フライエッグ」になんだか和む(笑)。
相席となったお向かいさんが注文したのが、「スパゲティ」。
おー、これがナポさんが「うまーーーっ!」と叫んでいたお皿かぁ、と早速翌日再訪しちゃいました。
今度は真ん中厨房寄りのスチール椅子に座って、椅子を少し動かそうとすると、何故か動かない。
あれ?っと思って足元を見ると、椅子の足でコンクリートの土間が削られて空いた穴に嵌ってる。
微笑ましくも歴史を感じる瞬間だよね。
大盛りでお願いします。
と、背後の厨房から炒め音の穏かなさざめき。
そこへおばあちゃんの鼻唄がふんふんと重なるハーモニー。
きたきた、きたきた(笑)。
もうひと目で、しっかり炒めているのが判る中太麺。トップには削りたてな感じのチーズのあしらい。
ケチャップがとろんとした膜を張って麺を被っていて、焼き目がヤバイ。
タバスコを添えてくれているけど、デフォルトにも辛味が利いている。
玉葱やベーコンの具の量控えめでピーマンは見当たらない、ほぼ麺のみの、実に実直質素なお皿がこんなに印象深いのは何故でしょう。
小網町の裏道でひっそりと、でもテーブルを埋める人たちが入れ替わり訪れる「桃乳舎」。おねえさんにお店の名前の由来を訊ねたら、
「昔、牛乳売ってたようですよ」と応えてくれた。
頭上には、葉にのった桃のレリーフ。
昭和なミルクホールが今、雰囲気や懐かしさだけではない、
旨い洋食のお店として生きている。
「本日のランチ」480円も人気です。
「桃乳舎」 中央区日本橋小網町13-13 [Map] 03-3666-3645