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熟成鶏醤油らーめん「上弦の月」で 長年のモヤモヤ晴れる一杯
ぐっとくる無化調らーめんの店「Zoot」へと再訪したものの、臨時早仕舞いの貼り紙に一瞬呆然とする。
あ、でも、近くに無化調のお店があるじゃんかとすぐさま切り替えて向かったのが、ご無沙汰の「上弦の月」。
実は以前訪れた時には、余りに期待値が高かったことからの反動か、好印象ではなかったのだけれど、たまたまのスープの具合とか食べる側の体調や気分など諸々の間の悪さがそこにあるようにも思えてずっとモヤモヤしていたのです。行列少ないようにと拝むように池上線の高架脇の裏通りを覗くと、店頭に列はなく、店内数人待ちの状態。早速、券売機に対峙します。
ボタンをポチとしたのは「らーめん」と「半熟煮玉子」「のり」。
例によって厨房の女将さんが、張り上げるように「いらっしゃいませ~」「お待たせしました~」「ありがとうございました~」と声を投げる。
仕込みから厨房での立ち仕事を続けるだけでも体力勝負だというのに、声を発し続けることでも消耗してしまうのではないかと心配になる。ややもすると押しつけがましく思うヒトもいるかもしれないけど、一貫したその所作には実に頭の下がる思いです。
どうも、店の真ん中に立ち尽くすように待たされたり、一旦右手の小テーブルに座るよう求められたりするのには違和感を覚えるものの、いろいろ考えてのことなのだろうね。
脂に滑るどんぶりが渡されました。まずはスープを蓮華で掬い、ひと口。また一口。もうひと口。
うんうん、旨い。
以前感じた、どこか薄っぺらいというような印象はどこへやら。
しっかり厚みのあるボディに、個性的な風味が折り重なって存在感を強くしている。
鶏の身から抽出したエキスをメインにここまでに仕上げているなんて、どんな魔法を使っているのかな、なんて思う。
でもそれはお手軽な魔法なんかじゃなくって、素材に向き合い、素材と会話をするかのように研鑽と工夫を重ね、そして時間を掛けて仕込みをしているってことなんだね。
比内地鶏、大山地鶏、羅臼昆布、粟国の塩、枕崎本枯れ節、青森ニンニク、……。
うーむ、そのスープにくにゅくにゅとしたやや太めの麺がよく馴染むのだぁ。
どんぶりを幕板の上に上げ、ご馳走さまと告げる。
長年のモヤモヤが一気に晴れたような心地よさで振り返る「上弦の月」の前には、空席待ちの列ができていました。
見上げる空には、下弦の月、ってね(笑)。
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「上弦の月」 大田区西蒲田7-63-9 03-5710-5667