二条城を向かいにする全日空ホテル、国際ホテル。
その裏手にこっそりした間口のお店があります。
おばんざい「蜂巣」。
風に揺れる枯れ色の暖簾を払うと、
柔和な表情の女性、そして店主が迎えてくれました。
割と新しい設えで、カウンターの奥にはテーブル席もあるようです。
ちょんと座ったカウンターの隅から、少し腰を浮かせながら眺めるは、
例によっておばんざいの大皿たち。
あ、ここにもお腹に「福」を記した猫がいる。
桃の枝を添えた三品のお通しと蕪のとろろ汁をいただきながら、お品書きを物色。
目の前にあった「南蛮漬」は、真魚鰹の南蛮だ。
店の名の由来を思わせる京都の純米吟醸「蜂巣」をいただくと、凍らせた竹筒がやってきた。
注げば時折つっかえるのは、お酒もきっちり凍りかけている証左。
きりりとしながら、甘さに似たとろみを感じさせるのは、
ぎゅっと冷やしてあればこそのお楽しみなのかもしれないね。
じっくり煮しめた表情の「鮪の有馬煮」。
有馬煮、というのは、有馬山椒を使って煮ているからだそう。
云われて気がつく、山椒の風味(笑)。
「赤天」って、鹿児島・天文館でみたあれかな?と思いつつ、「赤天って、京都の、です?」と訊けば、「いえ、島根の、なんです」とのお応え。
ちょっと意外だなぁといただけば、ふわっと辛い赤いヤツ。
隣に来たオッチャンは、座るなり「おばんざい三つおまかせにご飯と汁物、くれへん?」と云う。
そんな気安さも違和感のないお店だよなぁと店主とのやりとりを微笑ましく眺めていたら、
ふと結構酔ってる自分に気がついた。
まだおばんざいしかいただいてないのに、どうしよう。
基本路線の「かぶらむし」「ひろうす」から、「蒸し豆腐」「すっぽんの小鍋仕立て」「もち小芋の唐揚げ」「白魚の柳川」「湯葉の揚げ出し」などなど気になる品があるのに、もうすっかりふわふわいい気分(笑)。
畏まらせるところのない、でも背筋の通ったおばんざいの店「蜂巣」。
今日のところは退けましょう。きっとまたいつかお邪魔します。
「蜂巣」 京都市中京区二条油小路町289-2 075-213-1170
column/02526