column/02106
葱料理・湯葉とろろめし「葱や平吉」
大きな暖簾には“京都高瀬川水流るる”とある。葱料理の「平吉」は、その、さわさわと流れる高瀬川を背にして、西木屋町通りという細い粋な路地の一角にありました。「商い中」を示す木札の脇には、九条葱などの葱をはじめとした野菜たちが笊に盛られて置かれています。暖簾を分け入り、左手の囲炉裏を横目に大きなテーブルの窓側へ回り込んで、ちょうど川を見下ろせる席に腰を据えました。眼前の棚にもまた別の野菜たちが盛られていて、その先に見える厨房のバックバーには酒瓶が並んでいる。夜来るのも良さそうだなぁと思いながら、とろろめしに土鍋うどん、冷やしうどんが並ぶお昼の品書きを眺める。「名物湯葉とろろめし おばんざい付き定食」を選んでみました。まずは大きな枡にこんもりと盛り込まれた葱がやってきた。それだけで、なんだかニンマリしてしまう(微笑)。そして擂鉢状の器にある麦飯に、「湯葉ととろろを合わせ擂った湯葉ととろです」と云いながら、大きな擂鉢のどろんとしたそれを攪拌しながら目の前で流し込んでくれます。たしかにほんのりと湯葉の色合いを含んでいるように見える。早速、小口切りの葱を遠慮なくぶち込んで、海苔をちらし、鶉の玉子を割りいれる。多少ぐにっと混ぜてからやおら、啜る。繊細な甘さを思わす湯葉の風味ととろろのまったりとした口あたりが、優しい気持ちにさせるようだ。中途で塩をちょっと振っても、ちょっと醤油を垂らしても、その度にくっくと味わいのエッジが立つのも面白い。おばんざいとして添えられていた鶏と大根の炊いたんの、その出汁がまたうめぇ。「鴨葱煮込み」「胡麻唐豚煮込み」「牛スジ味噌煮込み」「つみれ京野菜味噌煮込み」「梅干入りきざみあげ煮込み」、……。その一方で実は、土鍋うどんにもめっちゃ挽かれていたのです。葱を目一杯投入してね、と。
「葱や平吉」 京都市下京区西木屋町通り仏光寺上る三丁目市之町260番地4 075-342-4430