column/01725
ラーメン専科「しま坂」
うらぶれた印象は隠せない大岡山北本通りに個性派を標榜するラーメン店がありました。カウンターのみ十数席が小奇麗に纏められている、ラーメン専科「しま坂」です。お品書きの冒頭に大きく書かれた「らーめん」にのり増し+煮玉子でお願いしました。改めてメニューを眺めると、その「らーめん」の左側に“麺少なめ”という一行があります。そんなに基本量が多いのかなぁと思うと、その隣には大盛りという一行もある。はてさてとさらに眺めると、左の頁に「ぞうすい」とあって、麺少なめがお薦めです、とあった。なるほど、端からぞうすいを見込んだ場合は、麺少なめが適当ということなんだ。と、そこへ口径の大きなどんぶりが届きました。まさに“のり増し”で、十枚を越える海苔がどんぶりの半面を埋めています。海苔のトッピングを追加しても申し訳程度のほんの数枚だったりする某店に見習ってほしい光景です。大きめレンゲでスープをひと啜り。明快な魚だしの香りがしたあとから意外に濃密なコクが下支えしてくる。ほうほう、旨いじゃん。くったりしない麺も悪くない。…ところが中盤を過ぎたあたりで途端にしんどくなってきた。頭の隅で、これ平らげて「ぞうすい」にまで到達してやろうなんて考えたのがいけなかったのか。醤油タレが塩辛く、スープが全体から発する“濃さ”を収容し切れなくなってしまった。なんとか完食して胸のあたりはちと苦しいのに、口はスープを飲みたがるという不思議な事態に(笑)。三日間煮込んだげんこつと鶏に宗田カツオのだしに鰯と日高昆布のスープ。そのトリプルスープが生み出す多層なるスープには、化学調味料も大蒜も塩さえも使っていないと云う。ふむ。“3度は試してほしい”という店主の主張を尊重して、また足を運んでみよう。今度は、麺少なめ&ぞうすい、だな。
「しま坂」 大田区北千束1-59-8 03-3723-0048