インドの方々の手によるカレーをいただいた「MILE POST CAFE」からの帰り道。
永代通りを渡る歩道橋の袂に大きく「京八」と染め抜いた暖簾が目を惹いた。
ビルの角で風に揺らめく暖簾は、焦げ茶色というよりは煎茶色というところか。
割烹のようなお店かと足を留めると、脇に立つ看板に、すきやき牛皿、おでん盛り合わせとある。
耳元を抜けていく冷たい冬風に、おでんもいいねと小さく呟きました。
ふたたび足を運んだ永代通り沿いの角のビル。
真ん中から暖簾を分けて、飴色に染まった木戸を引く。
するとお約束のように眼鏡が曇って、ほとんどなにも見えなくなる(笑)。メガネのモダンを耳から外すと正面に湯気を上げるおでんの鍋が見つかりました。
すきやき牛皿とおでんのいずれかと、店内にも筆の穂先を駆使した大きなお品書き。何故だか、みそ汁は別途となっているようです。
おでん鍋を前にするカウンターから入口脇の壁をみるとそこには、半紙への揮毫が並んでる。
夜メニューと思われる品書きには、「たヽみいわし」「北海道ひだら」に「新潟くさや」「エシャレット」「もろきうり」「納豆どうふ」とシブいところが揃ってる。お酒は「賀茂鶴」か「誠鏡」。
「びーる」の筆遣いがポップで素敵です(笑)。
まずはおでんからとお願いすると、失礼ながらすっかり腰の曲がった女将さんがアイヨってな感じで皿を手に鍋に向かう。
おでんの具を盛り、たっぷりと鍋に湛えた汁を匙で掬って皿に足してくれます。ご飯や味噌汁、お新香の小皿は奥の厨房で待機していた白衣の方が届けてくれる。
女将さんのご子息でありましょか。
やっぱり一番最初に大根に手が伸びる(笑)。さっくりと箸の先を受け止めた大根は、大根の甘味と酸味が素直に味わえるもの。
厚揚げにも味が滲みているものの、どうしても比べてしまうのは、新富「にしみや商店」のおでん出汁。
いけないいけない、いけません(笑)。
そうそう、京のおでんといえば、団栗橋の「蛸長」。
鮮度を思わせる澄んだ出汁がよかったなぁと思い出す。
あ、比べるのはいけないいけない、いけません(笑)。
日を改めて足を運んだ永代通り。
今度はカウンターの隅に腰掛ける。まだ客足の揃わない店内を眺めながら、夜、京風おでんやシブい酒肴たちを充てに賀茂鶴を舐めるオヤジたちの絵を想像します。
「すきやき牛皿」に当然のように味噌汁を添えていただきます。こっくりと濃いぃ味というよりは、さらっとした軽やかな味わい。
京都のすきやきといえば、「モリタ屋」のそれしから知らないけれど、そんな料理屋と真っ向比べるってのも野暮でありますね。
永代橋近くの角地に煎茶色の暖簾が京風おでん「京八」の在り処。茅場町と新川を繋ぐ霊岸橋の近くで50年営んだ後、ここ新川に移ってから28年と女将さんは仰る。
つまりはなんと、80年近い歴史があるということになる。
「京八」の名は、ご主人が京都出身であることから「京」を置き、そこに末広がりの「八」を添えたものだそう。
夜も寄ってね、と女将さん。
春になりきる前までにお邪魔できるといいなぁと思います。
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「京八」
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