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TRATTORIA「IL PACIOCCONE」
最寄りの表参道から徒歩13分。六本木通り沿いを渋谷からバスかタクシーかという立地の、ほんの一歩の遠さから、お邪魔する機会を得られずにいました。暗がりに浮かぶ、「TRATTRIA」と縦に配置された黄色い電飾文字が目印。符丁を唱えるようなイタリア語で2階へと導かれます。台形に広がるフロアにテーブルが並べられ、その飾らない食堂然とした雰囲気がなかなかいい。力まずく気取らず配慮の利いたハキハキとした応接も悪くない。定番メニューと黒板メニュー。あれこれと迷うのもまた楽しからずや。ナポリの前菜盛り合わせから「ヒコイワシのワインビネガーマリネ」「桜エビと春野菜のゼッポリーニ」「ぴり辛サラミと燻製チーズのパンツァロッティ」の3品を。ゼッポリーニとは天ぷらのような揚げパンのような。一方、パンツァロッティは、いわばラビオリだ。中に入ったチーズとサラミの組合わせはビールにもワインにも合って、おいしい。赤の「DOLCETTO D’ALBA 2003」にしてみます。抜栓後の渋みがだんだんこなれていくのが楽しめる。ピッツアは定番メニューから王道「マルゲリータ」。少々トマトソースが水っぽ過ぎるかなと思いつつ耳を折って持ち上げ口に運ぶと、鮮烈なトマトの風味とほどよい酸味が広がって悪くない。パスタは、クリームソースのものにと、「仔牛肉とソラマメのクリームソース”ジーティ”」に。ジーティとは、XLサイズマカロニだ。このあたりで、メインに2品は食べ切れないと判断。仔牛肉が重なることもあって「仔牛肉の炭火焼 イタリア最古の調味料”ガムル”仕立て」をキャンセル。ボリュームがどうか訊いていた経緯はあるけど、こんな時に「キャンセル大丈夫です、もっとお話しておけばよかったですね」と曇った顔ひとつせず応じてくれるのが心強い。で、メインには「桜鯛と春野菜のアクアパッツア ナポリ風」を。ソースに出汁がよくでていて旨い。フンワリとした身肉に野菜たち、そして他の魚介類を堪能する。店名に冠している某店のそれよりも断然いいと思ってしまった。気持ちがよくておいしいトラットリアがここにも ありました。帰りもやっぱりタクシーに乗ることになっちゃうけどね。
「IL PACIOCCONE」 港区南青山6-15-8 03-5468-0555 http://www.pacioccone.jp/