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居酒屋「北龍」で はもちり下足やきぐじみそづけいわし煮路地情緒
ここにも再開発の手が忍び寄る、お初天神脇の路地。
「北サンボア」の並びには、新しいビルが建ってしまった。
ずっと気になっている酒肆「門」は、今夜も満席。
ならばとその界隈で、店先の表情を眺めて回ります。
そんな広いエリアではないので、すぐにひと廻り。
鼻を利かせて、一軒の白い暖簾へと突入を試みます。
「北龍」というお店です。窺うようにしながら人数を知らせるサインを送ると、
白髪のおばちゃんが、ニンと笑顔で入口側のカウンターに誘ってくれます。麦酒をお願いして眺めるは、塩ビのケースに入った扇型のお品書き。
よく見ると、赤鉛筆で描いた赤蜻蛉が飛んでいる。
こっそりと季節のあしらいがするあたりが、いじらしいではありませんか。
達筆に読めないところを想像するのも愉しいかも、なんて云いながらまず選んだのが「はもちり」。もう、名残りの品なのかもしれないなぁと思いながら、そのふんわりと繊細な味わいに一気に和む。
続けて、「けんいか下足やき」。まだ活きている剣先烏賊をさっと捌き、じわじわっと焼けば、嗚呼ゲソってこんなにイケるのねって、再確認をする思い。
ちゃっと振った塩が烏賊の甘さと滋味を引き出すのだね。
「北龍」で燗酒といえば、「白鹿」のみ。
冷酒は、富山の純米吟醸。
酒肴につられて呑んでベロベロになってもいかんしなぁと自重して(笑)、「白波」ロックをもらいます。
「ぐじみそづけ」は、例によって、味噌漬けとか粕漬けとかってなんだかズルい!をそのまま体現してくれている。お酒にも勿論、白いご飯も欲しくなるヤツだよね。
ほっこりと甘い白身と皮目の魅力に、なぜかうんうん頷いている(笑)。
ご飯のおかずにもいいよなーという点では、「いわし煮」も負けてない。
おかあさんの素朴な酒肴に和みつつ、またグラスの焼酎をくぴくぴと。
西を訪れれば、南蛮にも鱧なんだねと「はも穴子南蛮」。
玉葱と酸っぱめ汁でさっぱりといただく、衣に揚げた鱧、穴子。
うんうん(笑)。
擂り胡麻を振ったいりこや沢庵をおまけにもらって、残りの焼酎舐めながら訊くと、奥さんが壁の写真のご主人を継いで数年になるという。
BGMがジャズなのは、ご主人が好きで流していたからなんだ。
お初天神東門の路地情緒によく馴染む、居酒屋「北龍」。店の創業来46年、当地に来て36年になるのだそうです。
「北龍」 大阪市北区曾根崎2-5-37 [Map] 06-6311-5212