家庭料理割烹「園山」で 愛の食材達蕗味噌へしこご飯黒豆プリン

sonoyama.jpg都内、恵比寿、某所。 案内されるまま見知った道を白金方向へと辿る。 丁寧に案内された目印に従って、 猫道へと斜めに肩を入れる。 ここを入るのかぁ、ときっと誰もが思う。 そして迎える古民家の佇まい。 飛び石を渡りながら、こりゃ住所だけではおいそれと行き着けない、まさに隠れ家だなぁと思う。 引き戸を開けて思わず口をつく、「こんばんは~」(笑)。
下宿として使われていた、築60年になろうかという古びた建物に手を入れて、 お食事処として甦らせたんだそう。 二階にも客間はあるようですが、案内されたのは玄関を上がって右手すぐのお部屋。 ここで暮らした下宿生もあったのだろうねぇなどと、不思議な懐かしさに包まれます。 オーナーの園山さんにもご挨拶いただきました。 まずは、沖縄の島南瓜と豆乳の温かいスープ。sonoyama01.jpgお酒の前にと拵えてくれた小さな小さな湯呑み状の杯は、 微かに薫る日向臭さと優しい風味に和ませる。 前菜の三品が、 長芋とおからのポテトサラダ、粟の生麩の自家製胡麻味噌焼き、壬生菜と高野豆腐の煮びたし。 sonoyama02.jpgsonoyama03.jpgsonoyama04.jpg もっちりした粟の生麩の食感と香ばしくした胡麻味噌の柔らかな風味がいい。 お造りは、かつをのアンチョビとケーパーのソース。sonoyama05.jpg薬味には、茗荷や蕎麦のスプラウト。 お刺身に別の魚の塩蔵を使ったソースをあしらうなんて、やるなぁ。 それも、香りのはっきりした鰹だから活きるのかもね。 福岡の麦「歌垣」を舐め始めます。 続いて、綺麗な多層の造形をみせる、アボカドのジュレ寄せ。sonoyama06.jpgトップに置いた雲丹の深い橙とジュレの層を挟んで透けるアボカドの黄緑色。 味わいをきりっとさせているのが、バルサミコとお醤油のタレ。 出汁で炊いた柔らかな筍と酢漬けの蓮根がさらに幾重の食感を添えています。 ホットな蓋を開ければ、湯気と一緒に浅蜊の茶碗蒸し。sonoyama07.jpg青海苔のあんに山葵を溶いて、ほろほろっと口の中で躍らせると、 浅蜊の磯風味や旨味がふわんと蘇る。 うへへ、しゃあわせ~、かなんか思わず呟いちゃうね。 sonoyama09.jpg天麩羅はというと、 たらの芽、グリーンピースのかき揚げ、 そして稚鮎を紫芋の塩で。sonoyama08.jpgたらの芽の香気はもとより、稚鮎のほの苦味がオトナだぞ(笑)。 片やお肉篇はというと、大和豚の蕗味噌焼き 蕗と春キャベツのおかか和え。sonoyama10.jpgすっきりした甘みの豚さんは、縁取る蕗味噌の薫りと一緒にするっといただける。 なにかと手間がかかっているのだろうになぁ、それはもう呆気ないほどにするんと、ね。 これもひとつのスペシャリテ、お野菜丸ごとの肉じゃが。sonoyama11.jpgなぜだか見るからに滋味深そうに映る人参、玉葱、じゃが芋。 煮崩れる気配のないその具材に箸を運ぶと、すっと柔らかに切り割れる。 思わず、じっと目を閉じて味わってしまう感じになる。 そしてお食事は、鯖のへしこの炊き込みご飯に島豆腐を浮かべた椀、お漬物。 sonoyama12.jpgsonoyama13.jpg 玄米に赤大豆、筍、牛蒡を含むご飯だけれど、なんと云っても、炊き込んだへしこの滋味風味とその発想が佳いよねぇ、うん。 sonoyama14.jpg 〆のデザートは、三品の盛り合わせで。 黒豆豆乳のプリン、春菊のシフォンケーキ、五郎島金時のガトーショコラ。 sonoyama15.jpgsonoyama16.jpgsonoyama17.jpg オーナー真希絵さんの出身地・出雲産の無農薬黒豆を使っているというプリンには、う~む1ダースほどお持ち帰りしたい!と唸ったけど(笑)、バターを使わずに仕上げたというガトーショコラには薩摩芋からおからまでも入れていると訊いてまた唸る。 シフォンケーキで弾けるえごまの実の香ばしさがまたニクい。 なんか、愉しむように試行錯誤している様子が浮かんでくるようだ。 sonoyama18.jpg卓上ある「園山の卯月に招かれし愛の食材達」と題した一葉には、山独活、蕗の薹、うるい、こしあぶら、蓬、桜鱒、白魚といった食材の名の筆文字がぎっしりと並び、まだまだ書き切れませんと続いています。 古民家を甦らせた恵比寿の隠れ家、家庭料理割烹「園山」。 “家庭料理割烹”とは、なんたるか。 肩肘張った形式や華美な創作とは一線を画す実直な割烹料理か。 はたまた、健やかなる旬の食材に真摯に向き合う家庭料理の昇華か。 一見客お断りの会員制に準じた構えにしていて、もしや妙に威高な店なのではと訝る向きもあろうけど、然にあらず。 それは女性だけで運営していることもあって、荒れないようにしていたい、 ということなのかもしれません。 でも、彼女の、彼女たちのお皿をもっと気軽にいただけたら嬉しいな、とも思います。 「園山」 恵比寿 某所
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