表通りからは離れた裏っ側なイメージは、築地七丁目辺りがその呼び名に一番相応しいかもしれません。
そんな裏築地・築地七丁目。
魚料理「はなふさ」と同じブロックにあったのが、石臼挽き二八蕎麦「土星庵」。
手挽きの旨い「もり」や綺麗にひかれた出汁の「冷やかけ」がイケていた「土星庵」の蕎麦。
ちょこちょこ通おうと思いつつ暫くしたら、いつの間にかなくなってしまっていた、それは幻の蕎麦店なのでありました。
そんな「土星庵」が名前を変えて、
築地の別の場所で営んでいると知る。「布常更科」の暖簾も程近い、
松竹スクエアとコンワビルの間の道の歩道に、
「手打ちそば」と謳うスタンド看板が見付かりました。
潜った暖簾の右手には、
大きくてがっしりした捏ね鉢を据えたテーブルがある。その脇に綿棒が纏められているところをみると、
この場所で蕎麦を打っているのでありましょう。
お好きな処へどうぞと促されつつ、
正面のカウンターの一席へ。頭上の下がり壁には、
その日打った蕎麦の産地が掲示されています。
陽射しギラッとしたある真夏のおひる時。
いただいたのはなんとも贅沢な「雲丹の冷やかけ」。冷やかけの汁に「土星庵」のあの夏の日を思い出す。
明礬の気配なき雲丹の甘さと滋味漂う手打ちの蕎麦の風雅に、
細やかに刻んだ海苔の香りが追い掛ける。どっしりした器にも何気ない拘りを感じさせて、
美味しさを更に後押ししてくれます。
季節は移ろい深まった秋の或る日のこと。
店先の品書きでお薦めの「旬のそば」には”牡蠣”の二文字。お願いしていた「牡蠣せいろ」のお膳が目の前に届きました。
頭上に貼られた短冊を見上げると、
富山県南砺産の秋新そば十割とある。
仄かに翠がかった端正な蕎麦が美しくも美味しそう。雅にして高貴な鉄色の椀には、
自慢の出汁の汁に浮かべたぷるふるの牡蠣。
さあ目を閉じて味わいましょう(笑)。
年明け早々、4日のひるに築地に行ってみた。
休場の明けない築地は当然のように閑散としていて、
営業している店がほとんどない。試しにと「文化人」の前の道を覗くと、
「新そば」の幟が新年の風にはためいてる。
なんだか救世主がここに!みたいな心持ちになりました(笑)。
その時にいただいたのは、
こちらのスペシャリテのひとつ「とうふそば」。緩くあんのかかった汁の上に浮かんだ、
お豆腐は自家製のものだという。
硬めにニガリを打ったお豆腐は、
北海道産の大豆の魅力がそのまんま活きている感じのする。
途中から添えてくれた黒七味で風味を増してみる。
これもまたお供にして呑めそうな、
そんなお蕎麦の器で御座います。
そして、春の気配も忍び寄り始めた今日この頃。
これまた旬の蕎麦をいただきに足を向けました。例のお椀の蓋を外せば目に映るのは、鮮やかな緑色。
一面にそして綺麗に載せられたのはそう、芹の緑色。「芹そば」と云えば、
ご存じ「泰明庵」の根っこ入り「せりそば」が有名処。
野趣の押し出し具合ではやっぱり「泰明庵」のそれにやや軍配なるも、
此処でもたっぷり春の息吹を感じさせてくれました。
裏築地の「土星庵」から転じて「文化人」と名乗る、
石臼碾き蕎麦の店が築地の一角にある。Webページによると、
店名”文化人”の由来は、「文化と人が集まる場所」。
ここで云う”文化”とは、
“そばという食文化、和の文化”のことを指すという。
頑なな求道系蕎麦店ではなく、
拘りの加減が粋にしてちょうどよい、そんな安心感がいい。
旬のつまみとお酒、そして旬の蕎麦。
そんな愉しみ方も勿論、ですね。
「つきじ 文化人」
中央区築地1-12-16 プレミアム銀座イースト1F [Map] 03-6228-4293
http://www.bizserver1.com/bunkajin/
素敵なお蕎麦屋さんですよね、凛として。旧弊なコンワビルの隣っていうのもミソかな。昔ながらの蕎麦屋風情もいいけど、イマドキからそれぞれ個性を保ちつつ共存して繁栄できるような環境が東京にあって愉しいです。
Re:桃猫さま
土星庵の頃のちょっと閉じたお籠りっぽい、いい感じから、
開いてそのまんまの小粋ないい感じになりましたね。
もう一度、場所を変えてさらに昇華した姿を魅せてくれるのではないか、
なーんて気もしています(笑)。