すずらん通りに再来した「Singapore Kopi Tiam」が嘗て八丁堀界隈を離れる前に「Singapore Seafood Emporium」であった頃は確か、この辺りにお店があった筈。
そこからほんのもう少し往けば右手に中華料理「福島屋」の、どこか懐かしいお店の佇まいが見えてくる。
オバチャンの立ち姿を思い出しつつもう数歩歩いた「福島屋」のちょうど向かい。
ややセットバックした建物一階に「八丁堀 こまつ」はあります。
店先の品書きにて目星を付けてから、
白い暖簾をひょいと払うのが恒例の挙動になっている。
正面は店内とを仕切る型硝子。クランクにアプローチして木戸を引けば、
その先にゆったりとしたカウンターが待っています。
例えば、真夏の或るおひるに選んだのは、
「鱧夏野菜の南蛮漬」。しっかりとした衣に包んだ鱧に、
柔らかな漬け地がすっと馴染む。
酸味を含んだ玉葱はもとより、
煮付けて冷たくした冬瓜なぞが、
夏の涼味となってくれていました。
同じ夏場には「鰹づけめかぶとろろ丼」なんていう、
ちょっと元気のでそうなメニューもありました。加減のいい厚切りにした鰹がどっぷりと漬け汁に浸り、
その脇をずるっとめかぶのとろろがガードする。
派手な見掛けばかりの海鮮丼喰らっている場合ではありません(笑)。
秋の気配が近づいた頃、
どうやら今年は鰆のカタや水揚げがいいらしいと知る。「鰆の塩焼き」を所望すると、
兜か身かを選べるという。
選んだ身の肉厚感に思わずニンマリ。
そして、たっぷりした身肉に繊細な甘さが宿る。皮目の細やかな焦げがなんともオツなのでありますね。
冬を迎えた或る日には、
「鯖白味噌煮」あたりにも惹かれつつの「鰊茄子」。こっくりした気配とさらっとした味わいとが同居した、
丁寧に煮付けた鰊にほっとする。
こふいふ風にいただく鰊てば、
恥ずかしながら他に思い出せません。
そしていよいよ「こまつの」の品書きに、
「牡蠣フライ」がやってきた。添えてくれたタルタルが成る程の和仕立てなヤツ。
マヨネーズしっかりのいつものタルタルも好物だけど、
こんなちょっとしたところの拘りが嬉しいね。
うん、旨い。
牡蠣は三陸産がいい、と仰います。
日本料理「八丁堀 こまつ」は、
14年7月の開店来じわじわとファンを増やしてる。カウンターの向こうを行き来する大将が、
“こまつ”さんかと思ったら、
ご主人は水永さんと仰るらしい。
訊けば、日本橋辺りの厳しい料亭で30歳過ぎまで修行した後、
京都、大阪での研鑽を経て今があるそう。
下積みは必要だと実感を籠めて語る表情には一抹の曇りも窺えない。
出来れば今度は夜にお邪魔して、
店名”こまつ”の由来についても訊ねたいなと思います。
「八丁堀 こまつ」
中央区湊1-2-7 カワジリビル1階 [Map] 03-6280-4673
http://hatchobori-komatsu.info/