仲見世通りあたりの猥雑さからは隔絶した雷門二丁目、
「初小川」と一本筋違いにある「色川」に寄ってみました。
暖簾には”創業文久元年”とある。
佇まいから推しても、下町の老舗らしさを感じさせてくれそうです。
ガラリと戸を引く。先客はカウンターの両端にひとりづつ。
ちらりとこちらを窺った大将は、そのまま奥の客と言葉を交わしている。
躊躇いがちにその真ん中の席へ。
「麦酒を」「あいよ」。
大将の風体、客と交わすべらんめいな口調、そして下町っこ気風丸出しの風情に、失礼ながら、感心してしまった。
「なんか、いいなぁ」。
炭の上にある串を指して、「きも、ですよね」とそれをいただく。
やっぱりこの苦味が大人の味だよな。
「そのあとぁ、鰻だな。さきぃ訊いとく。」と指す指に促されて振り向き見た品書きから「ん~、”特”で!」。
すると、「いまぁ、云い淀んだな、ほんとにだいじょぶか心配になっちまうじゃねぇか、ええ?」。
懐の心配をされてしまった。はは(苦笑)。
調子に乗って、お銚子を冷でもらう。
後から来た客がテーブル席から、「ゑら焼、ってなんですか?」と訊ねる。
ここのとこ、と自分の耳の下あたりをぱくぱくさせる所作をしながら、脂がのってうんめぇぞぉ、と返す。
手を挙げながら、こちらにもと云うと、「ひとの話に便乗するもんじゃねいやい。次回にとっておこうってのが心意気ある客ってもんだぞ」。怒られてしまった。
「…今日はいいけどな」。でも優しい(笑)。
じっくりと蒸し上げた鰻を炭で炙ってお重へ。
ふんわりと柔らかく、さらりとした辛めタレも悪くない。
このところ蒸さない「まむし」系の味わいに傾倒しているせいか、諸手を挙げて称える感じではないのが正直なところだけれど、なんせこの風情と大将のキャラが、いい。
翌日、日テレ「鉄腕!DASH」の特番を何気なく見ていたら、そこに見覚えのある顔が…。前夜に拝んだ「色川」のおやじさんがキャラそのままの姿で松岡とからんでいるのです。ちょっとした有名人だったのですね。
「色川」 台東区雷門2-6-11 03-3844-1187
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