深い川の下を走るようにも見える高速道路があるのは元々、楓川という風雅な名前の付いた川だったという。
川や掘割を干上がらせ、海を埋め立ててきたのも江戸~東京の歴史なのだとすればそれも已むなし。
いま渋谷で暗渠になっている宇田川の支流、河骨川が、童謡「春の小川」のモデルなのだとしたら、楓川も「秋の小川」とか「秋のお壕」とかに歌われていても可笑しくないなぁなんて思いつつ、首都高を渡る橋の脇にある公園の喧騒に佇みます。
小さな公園の近く、高速道路を背にした区画にあるのが、
Brasserie「Gyoran」の紅いファサード。かつて楓川の護岸だったのではとも思い、
高速道の擁壁の上に位置するのじゃないかとも思う、
いつもの中二階のテーブル席へ。
振り返れば硝子越しに首都高の京橋ランプを知らせる、
大きな標識が見下ろせます。
ギョランのランチメニューにはすべて、
自家製のパンとスープがついている。或る日は牛蒡のクリームスープ、
或るお昼は、マッシュルームのポタージュ、
別の雨の日にはグリーンピースのポタージュ等々と、
素材の風味を真っ直ぐ活かした、
時季のスープがちょっとした愉しみなのだ。
ランチでいただく機会はなかなかないと思うのが、
「エゾジカの赤ワイン煮 人参のピューレ」。滋味を包み込むように肉塊に煮た、
蝦夷鹿のすっきりとした旨味とコク。
赤のグラスをと叫びたくなるのはお約束ということで(笑)。
ジビエをしっかりなら鴨もある。
でもローストとかではなくて、この日のメニューは、
「フランス産 鴨肉のコンフィ シュークルート添え」。バリッと芳ばしき皮目の魅惑は勿論のこと、
それによって包むように蒸し揚げられた身肉が旨い。
成る程、この食べ口にザワークラウトが良く似合います。
洋食的定番なお肉料理にも映るカツレツも、
此処ではやっぱりひと味違う「フランス産 仔牛のカツレツ」。シュニッツェルのように薄めに叩いたでもなく、
仔牛の風味をしっかりと閉じ込めた、
カリッとした衣と一体となって齧らせるに適切な肉の厚み。
うん、美味いであります。
定番と云えば此方の定番のひとつともお見受けするのが、
「フランス産 牛ハラミ肉のステーキ」。噛み応えと一緒に愉しめるのが、
焼き包んだハラミ肉そのものの脂と旨味。
ベタつかない食べ口が好ましいのであります。
春を迎えた頃に店先のA看板で、
このメニューを見つけて飛び込んだ(笑)。
「フランス産 ホワイトアスパラとパルマ産生ハムのサラダ」。この日は、スープもアスパラガスのポタージュ。
細めのアスパラではあるものの、
歯触りとジューシーさとアスパラ独特の香りが楽しめる。
アスパラというとオランデーズソースのシュパーゲルが、
真っ先に脳裏に浮かんでしまうのだけど、
こふいふサラダ仕立ても美味しいね。
八丁堀の裏通りにあるBrasserie「Gyoran」は、
紅いファサードが目印のフレンチ。敢えて店名「Gyoran」の由来を訊けばやっぱり、
イクラとか数の子とかキャビアとかの魚卵、ではなくて(笑)、
八丁堀への移転前に、白金高輪の魚籃坂下近くに店を構えていたから。
オーナーシェフの羽立氏は、
三田「コートドール」での修行に渡欧、
「ブラッスリーオザミ」の名物シェフを経て独立、
今に至るのだそうです。
もしかしたら銀座でもお世話になっていたのかもしれませんね。
「Gyoran」
中央区八丁堀2-1-9 川名第一ビル1F [Map] 03-5244-9523
http://gyoran.com/