昨夕訪ねた近所の陽気な魚屋さんでは、間近な海で揚がったであろうその日の魚介たちがお出迎え。
鰯の仲間や小海老、ムール貝なんかを鷲掴みにして袋に詰めてくれる。
海の近くの魚屋の店先の様子と店のひと達の気風は、どこに行ってもいいものです。
持って帰った鰯や海老をしっかりめの唐揚げにしたらなかなか美味くて、ヤメラレナイトマラナイ。
すっかり”かっぱえびせん状態”に陥りつつ、麦酒も進んで困りました(笑)。
ムール貝は蒸し上げた後のスープもまたイケるのでありますね。
蒼穹の広がるグラドの街角。やっぱり何度も眺めてしまうのは、建物の間から覗くサンテウフェミア聖堂Basilica di Sant’Eufemiaの時計台。
実に絵になる景色なのであります。
そのポジションから振り返って、覗いた裏路地に見つかる楕円の看板。中央に「TONI」と示す文字が読み取れます。
でもそこはTRATTORIA「de TONI」の裏口あたり。
正しい入口は、賑やかな表通り、グラデニコ通りVia Gradenigoにある。cucina del pesce “魚のキッチン”を副題に謳うトラットリア。
通りの要とも云えそうなレストランで夕餉をいただきましょう。
開店早々の店内は、まだ静か。オリーブオイルのボトルバルサミコ酢のスマートなボトルが運ばれてきました。
このフロアがいつの間にか満席になるのです。
厨房の手前には、バーコーナーのような、硝子で囲んだフロア担当者の基地がある。厨房が丸見えにならず、かつ、お皿やボトルをサーブするのに機能的であるようにも映ります。
促されるまで気がつかなかったのが、床に張られた硝子越しの光景。足許に覗くローマの遺構が、グラドもまた歴史ある街であることを窺わせてくれています。
やっぱり旬のものなのか、口開きに届いたのは、前夜いただいた海老や鰯の唐揚げがおよそ同じような姿でやってきた!あのお魚屋さんを通じてやってきたものかもしれないな、なんて想いつつ豊かなる芳ばしさを愉しみます。
また、ヤメラレナイになったらちょと困るなと身構えつつ(笑)。
ご相伴の女史は「Spaghetti alle Vongole」。お魚レストランのボンゴレが、どうにもこうにも美味しそう。
ああ、それを註文めば良かったと本気で後悔したりしてしまいます(笑)。
ちょうどAsparagiのお祭りだと聞いてきたこともあって、アスパラガスを使った料理も気になる。
うーむと悩んで選んだのは「Gnocchi Fatti in Casa con i Fasolari」。なんのなんの、こっちのお皿もめちゃくちゃ美味しいそう。
成る程、お手製らしいニョッキが舌触り滑らかにジャガイモの風味を真っ直ぐ伝えてくる。それを浅蜊のような赤貝のような貝エキスの旨味ふんだんなソースが包み込む。
とっても美味しい、文句なし。
目移りして御免なさい(笑)。
セコンドの前にコントルノ。付け合せだけの器なようでいて、当たり前のように滋味を齎してくれる温野菜たち。
思わず、昔の人参はこうだった!なんてよくある台詞を吐いたりしてね。
メインは「Boreto alla Gradese con Polenta」。鱸の仲間と思われる肉厚の魚のぶつ切りを粗挽きの胡椒なぞのソースで蒸し煮にした感じ。
素朴な仕立てのようにも見えるけど、白身が含んだ甘さをぐっと真っ直ぐ引き出していて唸らせる。
添えてくれている白ポレンタは、つまりは玉蜀黍の粉のお粥だね。
そんな頃幾つかのテーブルでは、鱸の塩釜焼きを豪快に叩き割るパフォーマンスが催されて歓声が上がります。
木槌で叩いている方もとっても愉しそう(笑)。
Dolceのお皿はとっても艶やか。ベリー系とチョコレートの相性の良さをエスプーマの泡と一緒に確かめれば、なんだか一層気分が解れます。
グラドの目抜き通り、グラデニコ通りの中心に、
魚料理の厨房たるTRATTORIA「de TONI」がある。海辺の街の魅力のひとつ、豊かで新鮮な魚介類の恵を郷土の味わいでぐいと推す。
そんな気風が、心意気が頼もしくってまた訪ねたい、そんなレストランでありました。
TRATTORIA「de TONI」
Piazza Duca d’Aosta n.37 34073 Grado Italia [Map] +39 0431 80104
http://www.trattoriadetoni.it/