築地には、一丁目から八丁目まであって、東南に勝どきを対岸にする隅田川、南西に浜離宮を対岸とする築地川、北西に首都高環状線、北東を新富町ランプと聖路加病院を境にしたエリアが築地となっている。
築地市場が位置しているのが築地五丁目で、場外や築地共栄会のビルのあるのは築地四丁目だ。
築地≒市場であって築地=市場ではないものの、場内場外以外の築地の店々にも市場の色や風情を帯びているところが少なくない。
築地の二丁目や三丁目、六丁目の東側から七丁目にかけての界隈にも気になるお店があれこれあるのです。
それは、年の瀬も押し迫った週初めのこと。
二丁目のおかみ丼々「和田」は、ランチ営業を止して暫く経つしと、我等が「魚竹」に向かうと既に年内の営業終了の貼紙。
然らばと踵を返した先が、ご無沙汰の「うまいもん屋」でした。
あの、くの字の路地に、今はもう閉めてしまった喫茶「ひよ子」の脇から入り込む。
店先には、例によって初めての方や観光客の方は12時半以降にという貼紙を座面に貼った椅子が置かれています。
初めてじゃなくて、良かったぁ(笑)。
今や擦り切れてボロボロになってますます味の出てきた暖簾を払って、こんちはっと引き戸を開ける。
右手の小上がりに上がり込みましょう。
品札ではなくて、手書きの貼紙が厨房の下がり壁に貼られていて、そこに「かきフライ定」の文字を見つける。
「まぐろ丼」「海鮮丼」も気になりつつ、「かきフライ!」と女将さんに叫びます。
例によって、いやいつもにも増してメインディッシュが届く前のお膳にちょっと愕く。菠薐草のおひたしに、蛸と鮪の刺身、おから煮、べろっと縦に包丁を入れた沢庵の小皿なぞ。
メインのおかずが出来上がるまでこちらで進めててもらってよいですよのサイン。
何気なく口に運んだ鮪が妙に旨くって、こりゃ「まぐろ丼」もきっといいに違いないと頷き合います。
おまたせ!ってな気風で届いた牡蠣フライは、ざっくりパン粉に包まれた4片が寄りそうヤツ。滋味が濃いぃのに臭みなしのブラボーな美味しさ。
大将に何処の牡蠣かを訊いたらば、うーんとね、判んない!だって。
大将らしいや(笑)。
年が明けて通常営業になってしまったのか、おひるの品書きに「まぐろ丼」が見当たらない。ならばと、「ねぎとろ丼」をお願いすることといたしましょう。
想定とちょっと違うどんぶりの佇まい。醤油タレはあらかじめ回しかけてくれちゃってる。
ほうほうと端の方から解していただけば、むほほ、期待通りに濃密な鮪の旨味と脂に細かく叩いた葱がいい。
少々醤油が強いかもしれません。
或る日には久し振りの「あこう煮定」。濃いめのタレがしっかり滲みた赤魚鯛がほろっと甘い。
ゴハンがぐいぐいいただけます(笑)。
また或る日には、「鮪カツ定」。少々油の温度が低めだったかなぁと思いつつ、ひと齧り。
パサつかず、火を入れても美味しいマグロを喰らっている満足に忽ち包まれます。
そういえば、「定食」と書かずに「定」で止めるのが、「うまいもん屋」ひるメニューの書き方なのですね(笑)。
築地二丁目のくの字路地に「うまいもん屋」はある。またふと、今日は「まぐろ丼」があったりしてと思いつつ足を向けることになると思います。
「うまいもん屋」
中央区築地2-10-5 寿ビル1F [Map] 03-3545-5455