高架の下のやや暗がりを抜けて、南馬場の通りにある赤提灯のラーメン店に何度かお邪魔したことがありました。
美味いのになにやら曰く付き状態(笑)らしい、そのラーメン店からの帰り道。
新馬場の駅には戻らずに、大井町方面へと第一京浜を渡ります。
南品川四丁目の信号からバス通りを往くと、その道は天龍寺というお寺のところで左に90度カーブを切る。
そして大井町駅方向へとタラタラと登る道は、ゼームス坂となる。
その左に急カーブしたちょうどコーナー辺りにあるのが、洋食「富士」。オレンジ色のテントが照明に照らされて赤く浮かび上がっています。
バッテン描く桟の木のドアから中に入ると、店内も外観と同じく古びた木造りの温もりがある。厨房に向かうカウンターでは、昔ながらの場末のスナックのようなスツールが味を出しています。
板張りの壁にズラッと並んだメニューからまずは、「ツナサラダ」。パプリカの粉を塗したシンプルなお皿であります。
サラダをいただきながら聴いていたのは、キッチンの道路側にあるガスレンジの鍋から溢れてきていたピチピチした揚げ音。
「カキフライライス」の牡蠣フライは、時季にもよるのかもしれないけれど、小振りな牡蠣のフライをわらわらっと盛ってくれるタイプ。あまり大きい牡蠣のものよりも、ふた齧りでイケる感じの牡蠣のフライがジャストサイズだと思うんです。
Gingerちんも勿論いただいていたのが、「特製豚の生姜焼きライス」。シャクっと噛む玉葱の甘さとしっかり利いた生姜の風味でグイグイ喰わせる豚ロース。
こうしてゴロっとさしたサイズに切り分けてからソテーするのも一手でありますね。
そして、ナポちんもとんかつのっけていただいていた「スパゲッティ ナポリタン」を大盛りで。
注文をお願いすると、女将さんが店の隅にある冷蔵ショーケースからパッドを取り出す。
それを受け取った親父さんがそこから茹で置きしていた太麺を鷲掴み。
それは荏原中延の「ふじかわ」同様、味噌汁のお椀と一緒にやってきた。牡蠣フライや生姜焼きと同じお皿にギュッとコンパクトに盛られている所為か、あまり大盛りには見えません(笑)。
粉チーズはデフォルト。
フォークを繰って太麺を絡め取り、鋒にウインナーを刺す。炒めて丸くなったケチャップがまったりと麺に纏わり付いて実に美味い。
やっぱりナポリタンは茹で置き麺でなければと確信する瞬間です。
ゼームス坂が第一京浜に至ろうとする急カーブに洋食「富士」はある。そうねもう開店から40年くらいかしらね、帰り際女将さんがそう応えてくれた。
ついでに、店名「富士」の由来も訪ねておくんだったなぁ。
因みに店の前から富士山が望めたことは未だ嘗てないものと思われます。
「富士」
品川区南品川4-4-22 [Map] 03-3471-3084