凛とした空気にも触れつつ、雅な朝の定食をいただいて、チェックアウトまでの時間を梅の木の絵のお部屋でまったりと過ごします。
もう一度お湯に浸かるなんてのもよいかもしれません。
時間ぎりぎりまで粘ってから(笑)、前日やって来るときに繭を潜めた箱根湯本までの一本道の渋滞を懸念しつつ、ホテルを後にする。
たった一泊だけれど、お世話になりました。
前日駅伝のランナーが駆け下りたであろう東海道を下りゆく。
平行して走る箱根登山鉄道の宮ノ下駅や太平台駅の脇を通過する。
そんな頃から案の定、少々の渋滞に嵌り乍ら、塔ノ沢温泉を通って無事、箱根湯本まで下りてきましたた。
フロントの姐さんおススメのおひる処のひとつがやっぱり、いつぞやの蕎麦処「はつ花」。
でもきっと、混雑しているのだろうなと思いながら早川を渡る湯本橋の向こうを眺める。
これまた案の定、店の前に行列がある。
新館に廻っても一緒だろうなと合点して、行き先を変更しました。
そのまま箱根湯本の駅前から橋を渡り、湯本富士屋ホテルの前を通って、旧東海道に抜ける。
そこから須雲川の川縁方向へとぐるっと廻り込んだ滝通り。
あ、ここだと車を停めたのは、手打ち蕎麦処「彦」の前です。
ストーブの焚かれた店内は暖かで、先客の品のいい老夫婦がそばを啜っているところ。
その並びの隅のテーブルに落ち着きましょう。
「鴨汁蕎麦」や「とろろ蕎麦」あたりを奢っちゃう手もあるけれど、ここはひとつ、店名を冠した「彦」を大盛りで所望したい。
「彦」は、一日30食限定と謳う二八蕎麦。北海道の音威子府(おといねっぷ)産の蕎麦を挽きぐるみした粉を使っているそうだ。
届いた膳は、江戸の粋、なんて詠んでしまいそうな端正な佇まい。じっと見詰めると、仄かに翠色がかった蕎麦に挽きぐるみの蕎麦殻の破片が均一に混ざり込んでいて、なかなか佳い風景だ。
挽きぐるみを敢えて二八に仕立てたところに一種の気風を想います。
さらっとしつつ、出汁とかえしがぎゅっと凝集した感じの辛汁にちょいちょいと浸してズズと啜る。汁の旨味と蕎麦の風味とが一気に鼻腔と味蕾に押し寄せて嬉しがらせる。
うんうん、美味しいね。
わざわざ仕立てたものとは違う風の蕎麦湯を汁に注いでいただく。打ち粉の妙な濁りもなく、すっきり旨い。
美味しい蕎麦は蕎麦湯も旨いのは、およそ当たり前のことですね。
実は、「白海老かきあげ」のオーダーもしていたのだけど、一向に届く気配がないので訊ねたら、注文が厨房に通っていなかった模様。
じゃあ結構ですと断って、そんなことも気にならぬまま、蕎麦三昧に満足のおひるどきでありました。
旧東海道が抜けゆく箱根湯本茶屋の滝通りに手打ち蕎麦「彦」がある。屋号の「彦(げん)」は、店主、野方治彦の「彦」の音読みだとWebサイトにある。
駅からちょっと距離があることが、落ち着いた雰囲気を生んでいていい。
「はつ花」に行列を認めたら、散策するように足を延ばしてみるのも一手だと存じます。
「彦」
神奈川県足柄下郡箱根町湯本茶屋183-1 [Map] 0460-85-3939
http://www.teuchisoba-gen.com/