改札からすぐの処にあったのが、
札幌ラーメン「どさん子」。
荏原町商店街の中央通り沿いにあって、
パフェの思ひ出懐かしいのが甘味処「銀星」。
亀屋万年堂の小さな店もあったっけ。
それらを含んだ駅前の区画全体が、
再開発の憂き目に合い、取り壊されてしまいました。
駅前整備事業の区画から本通りと呼ぶ通りを往くと、
左手に支那そば「てつや」がすぐ顔を見せる。
そのまま南下して立会川の暗渠を過ぎた辺りからは、
縁日通りと呼ぶ静かな商店街になります。
通りが二股に分かれるところに小さな祠がある。明りを燈した紅い提灯には庚申堂とある。
その脇をよくみると黒ずんだ石柱が建っている。
案内板によるとそれは、品川区の指定史跡の「天明三年銘石造道標」で、
右に行けば鵜ノ木光明寺道で、左に行けば池上道であると刻まれているらしい。
ちょうどその分岐点あたりにあるのが沖縄料理の店「ととの店」だ。
引き戸の内側に掛けられた、宮古島の泡盛「菊之露」の暖簾を払うと、
左手にカウンター。奥にちょっとした小上がりがあります。
やっぱりここからでしょうとオリオンビール。BEGINの「オジー自慢のオリオンビール」を小さく口遊んでからジョッキを傾ければ、
気分は一気に彼の地に飛んでしまいます(笑)。
口開きは、例えば「すーちーかー」。お手製と思う塩豚で、またオリオンのジョッキを傾けるのであります。
幕板に張った品書きとレンジフードのホワイトボードの品書きとを交互に見比べて、
あれこれ迷っての「なーべらーンブシー」。なーべらーから滲み出た汁と味噌とがうまいこと絡んで、
玉子やポークとも仲良しで、納得のひと皿。
出汁を利かせた酢の物や天ぷらも勿論良いけれど、
この日の気分は、「もずくの平やち」。モチッとさせた生地の中の要所要所でもずくのプチッとが愉し美味し。
別の夜に通りを訪れると、二股の庚申堂で手を合わせるオジサマがいた。日常的なお詣りになっているのでしょうね。
やっぱり美しいなと「海ぶどう」の煌めきを眺めつつ、
例によって、お品書きを右に左にと目線を泳がせて物色します。オリオンを右手にね(笑)。
するとカウンターの上に置かれたポークの缶が目に留まる。ポークの缶詰は、例えばハワイやグアムだと「SPAM」を見掛けることが多かったけど、
沖縄ではこの「TULIP」のシェアも高い気がします。
それならばと、お願いしたのが「ポーク玉子」。つるっと厚手に焼き上げた玉子生地にポークが透ける。
ポークの塩っ気を充分に計算した素朴な味付けが、いい。
那覇の竜宮通り社交街の山羊料理「さかえ」を思い出しつつ、
目にすれば注文してしまうのが、「人参しりしり」。「さかえ」のネーネーが作るのは、まさにシリシリした人参一本槍だったのに対して、
こちらのは多少青みなぞも混じるもの。
これもまた沖縄料理のラインナップに欠かせないと思うのが、「中味汁」。烏賊墨色の汁に一瞬「おお!」と思うも、
おろし生姜を解かして啜る汁は意外なほどあっさり。
所謂煮込みとはちょと違う、より素朴にモツの滋味を味わう術がここにあります。
季節を変えて、また別の夜。彼の地にいるとよくお世話になる「さんぴん茶割り」を舐めながら、
改めて品書きを見上げます。
たまには、定番中の定番のひとつ、「ラフティ」あたりから始めてみましょう。飴色が濃度を増していて、じつにとろりんとした、そんな角煮は、
あっと云う間に口腔から消えていきました。
ひらやーちーも良いけれど、天ぷらもいいねと「もずくの天ぷら」。軽い軽い歯触りの中で小さく弾けるもずくの風味に小さく微笑んでしまうのです(笑)。
今夜は、ここいらで食事にしてしまおうと「ウチナー焼きそば」で定食にしてもらう。ウチナー焼きそばの多くが、つまりは沖縄そば的ナポリタン。
平打ちの麺にケチャップがしっかりと纏って、なかなかに旨い。
セットしてくれたご飯が、所謂「じゅーしー」であることもまた何気に嬉しくて。ジューシーとナポリタンな沖縄そば炒めとのセット、お気に入りなのであります。
荏原町の縁日通り、二股の庚申堂のお向かいに沖縄料理「ととの店」がある。カウンターに宮古列島、下地島の通り池の写真が貼られているので、
ご主人に宮古島の出身かと訊ねるとそうではなくて、
沖縄本島、今のうるま市のご出身だと云う。
あの海中道路が導く伊計島は、合併したうるま市に属していんるだね。
「とと」というお店の名前も、離島の方言に由来しているのかなと思えば、
これまたそうではなくて、
ご主人のことを「とと」と呼んでいた娘さんが、
ウチナーグチでの店名を考えていた父親に、
「ととの店なんだから”ととの店”でいいじゃん」としたのが、はじまりだそう。
ヨメとムスメとの多数決に負けちゃってとニヤッと笑う、笑顔がまたいいんだな。
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「ととの店」
品川区中延5-14-26 [Map] 03-3786-8868