薄暗い通りを仄かに照らす灯りは、ひな鳥「そのだ」。元小料理屋をそのまま居抜きで営んでいる、 そんな雰囲気の暖簾です。
手前のテーブルとL字のカウンターとで10数席の小ぢんまり。カウンターや厨房の棚などに所狭しと焼酎の一升瓶が並んでいます。
飲み物と一緒にまず注文したいのが、 この店の主役にして揚げ上がりまで20分ほどの時間を要する、 「ひな鳥の素揚げ」だ。
それを追い駆けるようにお願いしたのが「手作りポテトサラダ」。ジャガイモの解し加減、水分の飛び加減が好ましい。 なんかこう、味わいの軸がしっかりしたポテサラで、 いままでの経験上でも特に印象的だ。
今日はあります的なお声掛けで口福とさせてくれたのが、レバー刺し。ああ、旨い。 ねっとり柔らかそうで歯応えがあり、 口腔に広がる滋味の中に鉄分が過ぎります。
そして、たっぷりの小葱をいただいた「揚げたて絹あげ」。葱が零れ落ちないようにそのひとつをずらすと、 顔をみせた断面から上がる湯気。 お皿のポン酢を底面に含ませてからそっと口に運ぶ。 熱々で軽快な香ばしさと葱の青みが弾けると同時に、 絹豆腐の肌理が滑らかに甘く解けてゆく。 はふほふしながらもう一片。 これもまた素揚げの店ならではの酒肴なのでありますね。
どういう訳か、どこの呑み屋居酒屋でも思わず反応してしまう、 “煮込み”の文字(笑)。此処ではそれは、「鶏煮込み」のお皿となる。 鶏モツの誘いが塩仕立てで迫ります。
これまた前割りの焼酎のグラスにも似合うのが、「鹿児島県産 鳥ユッケ」。ゴロゴロな感じに粗く刻んだ鶏の身の歯応えと滋味。 崩した黄身のコクが艶かしさを深めます。
一瞬梅干にも見えるヤツ。 さてこれは何でしょう?と設問したくなるお皿が届いたよ。正解は、素揚げの「ソーセージ(魚魚)」。 添えてくれたタルタルでいただけば、オツなおつまみ。 これもまた素揚げの店ならではのものでありますね。
そして満を持して登場したのが、「ひな鳥 素揚げ」のセット。薄手にカラっと揚がった皮目に無造作に歯を立てる。 香ばしさの中から透明な脂の滲む。 手掴みで繊維質をかじかじする臨場感がいいね。
続いて届くは、ももの素揚げ。セットというのは、手羽付きのむね肉とももの両方ということで、 どちらかのみの注文も承ります(笑)。 〆ちゃいましょかと発注しました「鶏スープにゅうめん」。煮出したエキス十分のスープは程良い塩加減。 満腹な筈の胃の腑にするんと収まりました。
池上通りから外れた裏道に、素揚げの店「そのだ」の灯りが点る。ご主人の柔らかな対応が心地いい。 蒲田「うえ山」直伝の、という辺りのことも訊ねに、またお邪魔しなくっちゃ。
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「そのだ」 品川区南品川5-14-11 [Map] 03-3471-2322
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