本門寺通りも元旦から10日も過ぎればもう、正月の雰囲気は薄らいできている。
それでも総門を入る頃になると、詣でるひと達が増えてきて、よいしょよいしょと階段を一段一段登る子供たちの声も聞こえてきます。
ちょうど時間は、13時。
大堂にお参りし、お守札を頂戴し、お焚き上げをお願いし終えたところで境内にアナウンスが流れました。
大堂前の境内では、吉例「はしご乗り奉納」を待つひと達の人垣。
仁王門のところに鯔背な半被姿の火消し衆が出番を待ち構えていて、
合図とともに唄い、纏を回し上げながら、境内の中央へと進んでくる。
四方から囲むように鳶口で押さえたはしごを、
ひょいひょいっと一気に一番上まで登り、
代わる代わる色々な型の技を披露してくれる。よ!日本一!の掛け声に応じて、また意気が上がっていくよう。
「二本遠見」が決まった向こうは、
大堂の屋根瓦と一点の曇りもない蒼穹。
清々しくも雅な情景ですなぁ。
そんな境内から階段を戻り、総門を出たらすぐに右へ折れる。
目的地は、甘味処の「あらい」か、
そばの「蓮月庵」か。
「あらい」店頭の「お雑煮」にも惹かれつつ、
蕎麦な気分も頭を過ぎり、
路上でしばし腕組思案(笑)。
今日は、「蓮月庵」のお世話になりましょう。
磨硝子の引き戸、すぐのところのテーブルに相席で。
常連らしいオッちゃんは、
きっといつものようにカレーライスを召し上がっています。
妙な懐かしさも手伝って、お蕎麦の前に「みそ田楽」。胡麻の入った甘く香ばしい味噌と蒟蒻との素朴な味わいが、
「蓮月庵」の枯れた風情によく似合います。
そして、お願いしていたどんぶりは「けんちんそば」。
湯気と一緒にやってきたのは、これまたなんとも素朴な一杯。あっさりした汁に、銀杏切りの大根や人参が浮かぶ。
能書き不要の蕎麦に、ゆるゆると温まって、ほっと息を吐く。
こんな昼下がりもいいもんです。
池上本門寺、総門近くの老舗蕎麦処「蓮月庵」。佇まいの枯れた風情は、
本門寺お膝元の情緒も手伝って、なんともいいお味。
今度は、燗酒を「もつ煮込み」でやっつけるところから始めたい。
ゆるゆるした午後にね。
「蓮月庵」
大田区池上2-20-11 [Map] 03-3755-4170