column/02804 @6,600-
炭火と天ぷら「割烹 なかじん」で 山野草の天ぷら全粒粉麦切り
東山駅最寄の古川町商店街というアーケードにあった、
「虚無蕎望なかじん」。
こんな蕎麦と料理の世界もあるのですよと教えてくれた中村さんが営む店だったのだけど、体調を崩し、あろうことか蕎麦を打つ本人が蕎麦アレルギーを発症してしまったということもあって、店を閉めてしまっていました。
その後、高倉六角「小豆家」を引き継いでいた「うさぎ亭」に移って、しばらく。
その「小豆家 うさぎ亭」を再び「なかじん」として甦らせたというのです。「割烹 なかじん」のファサードには、「虚無蕎望なかじん」と同じ焼物が店の名を示しています。
絣の暖簾を潜れば同じく、古川町の頃に似た空気感を宿しているように感じます。
ギネスをいただいて、眺めるお品書き。
お昼は「昼の雪点心」「昼の月点心」「昼の花点心」というみっつのプリフィクスで、それぞれに八品ほどの前菜と主菜が用意されている。
この日の前菜には、「丹波地鶏のたたき わさび梅肉」「明太子と青じその生ゆば巻き」「生うにと焼き海苔」「とり貝とアスパラガスの炭火で炙ったサラダ」などなどがラインナップ。
主菜には、「地鶏の皮きも焼き」「小海老と野菜のかき揚げ」「坂東太郎うなぎの白焼き」「うにの天ぷら」などなどが並ぶ。
ただし「麦切り」は、一番お安い「雪」には含まれていません。
「麦切り」も目的のひとつだったので、おのずと「月」ということになりました。
先附に、ぽん酢のジュレと芥子でいただく初がつをと赤蒟蒻や天豆、松の実の白和え。
むにんと加減のいい厚切りの鰹の炙った香ばしさをぽん酢ジュレが水っぽくさせないままに引き立てています。
お凌ぎとして届いたのが、コーヒーカップ型の器。
海老のおこげあんかけ、というの説明を聞きながら中を覗くと、
ホントだ、おこげが浮かんでる。おこげの芳しさが、旨味たっぷりあんかけに解けて、否応なく美味しい。
はしたなくも、カップを真っ逆さまにするくらいにあんを舐めてしまったもの(笑)。
前菜に選んだのが、「蔵王放牧豚の角煮」。
まさに四角くコロンとしたバラ肉の煮物を思い浮かべているところへ、大きくゆったりとしたお皿でやってきたのは、トマトのスライスを下に敷いた見た目にも柔らかそうな厚切りスライスの豚さん。
たっぷりの粒マスタードと花クレソンをあしらってある。
「トマトと一緒に召し上がりください」という中村さんの謂いに従って、その豚さんに箸の先を入れるとあっけなくふたつに割れる。
うーむ、すっきとしつつ旨味溢れる豚肉にトマトの酸味甘味が加わって、こりゃイケる。
煮汁を飲んでしまおうか(笑)。
トマトは、静岡の「アメーラ」だ。
もう既に、お酒は特別純米「久寿玉」になってます。
お椀をぱかりと開けるとそこには、
浜防風に独活、うすい豆(えんどう)のしんじょが出汁に浮かんでる。なにより昆布の出汁が佳くて、しみじみとしみじみとしてしまいます。
ふー(笑)。
そして、主菜にと選んだのが、「山野草の天ぷら」(+500円)。
中村さんがあらかじめパッドに用意した野草を案内してくれる。
山牛蒡にこごみ(草蘇鉄)、芽独活(めうど)に雪の下、こしあぶら。添えてくれた「雲丹塩」は、4時間もかけて作っているという塩で、擂り鉢でよくあたることで細かなパウダー状になっている。
目の前の揚げ立てを、その雲丹塩をちょちょっとつけていただく。
それぞれに目を閉じてしまいそうになる(笑)けど、こしあぶらの天ぷらが白眉かな。
上品な香りがふわーんと広がるのであります。
さてこれもお待ちかねの「麦切り」。
生地を揉み込むような動きをしたかと思ったら、
棚の下から取り出したのが愛らしいフォルムのパスタマシン。
広げた生地を一度マシンに通して伸し、さらに切り加減を調整してハンドルを回す。
すっと掌で受け止めたひと束がやってくるのだな。
おー、「虚無蕎望なかじん」の蕎麦のトキメキを思い出す。
古川町の時と同じく、粗塩が用意されていて、まずはその粗塩をぱらぱらと上に振ってからその辺りをいただきます。もっちりとしながら粉の風味をふんふんとさせて、
それを粗塩のミネラルがぐいと輪郭の中に収めてくれる。
うはは、いいなぁ。
後半は、出汁のふふんと利いた汁に、胡麻とおろし生姜を少し入れて。
うへへ、これもまたいい(笑)。
全粒粉に中力粉、そしてセモリナを配合しているそう。
讃岐とは違う食感のモッチリの謎はその辺りにもありそうだね。あっという間に啜り終えちゃったところへ、急須が届く。
中の白出汁をつゆに注いで、その曇りなく煮出された旨味にまた、しみじみ。
カウンターから眺める調度類は、「虚無蕎望なかじん」の頃と同じ印象なのだけど、訊けば「うさぎ亭」に用意したものをそのまま使っているものが多いそう。
後ろ側にある棚の幾つかは、古川町の頃のものもある。
縦格子の棚は中がセラーになっていて、お洒落だ。
デザートに「うさぎ亭」でも人気者だったという「手作り あんみつ」。天草から作るという寒天の自然な口解けを凝縮がありながら癖のない小豆と黒蜜の甘さ風味が包み込む。
オンナノコの気持ちが判っちゃう感じ(笑)。
曲折を経て、新展開を果たした炭火焼きと天ぷらの「割烹 なかじん」。もう蕎麦の店でも、単なる麦切りの店でもない。
店主中村一臣さんのセンスと自然で旬な食材への慈しみがそこここに発露するお皿たちを味わいに、また行けたらいいな。
口関連記事:素料理「虚無蕎望 なかじん」で 穀物としての蕎麦を識る(07年08月)
「割烹 なかじん」 京都市中京区高倉通六角上ル滕屋町175 [Map] 075-257-2288 http://www.nakajin.net/
まさぴ。さま。
きゃぁぁぁ、すごいですね、素晴しいお料理の数々!
幸せな気分になりました。。
そしてギネスから始めるまさぴさんもクール☆
Re;laraさま
うん、ありがとーヾ(´ε`*)ゝ。
めくるめくフレンチ、イタリアンもハッピーにさせてくれるけど、こふいふ和食の方が実は構えずしっくりと幸せに浸らせてくれますねー♪
昼からちょっと、呑んじゃいました~(あは)。
はじめまして、いつも楽しく拝見しております。
「割烹なかじん」再開の嬉しいお知らせ♪
「そうだ京都、行こう」という気持ちです。
3月に京都へ行った時に、知っていたら・・・
京都へ行くと錦、イノダは必ず参りますので、次回伺います。
またひとつ京都での楽しみが増えました♪
Re;Rさま
ありがとうございます。そんなコメントが実は一番嬉しいです(笑)。
「なかじん」は年明けから本格的に営業を始めたみたいですね。格式ある割烹ともまた一趣違って、やっぱりいいですー。