
八坂の塔から登り辿って、
産寧坂を臨むところで左手に分かれるように二年坂の階段を下るとすぐに見つかる看板があります。
洋食の店「みしな」。
その路地を覗き込むと、雨に濡れた敷石の先に再び目印が、すっとある。
ちょうど正午を過ぎた頃。
お邪魔してみなくっちゃ。自ずとそんな気分になるのです。
窺うように引いた戸の奥のカウンターは既に先客で埋まりかけている。
女将さんが、笑顔で迎えてくれました。
「みしな」のランチメニューは、「カニクリームコロッケとエビフライの盛り合わせ」「ヒレ肉一口カツレツ」に「ビーフシチュー」。それぞれに「お茶漬け付き」と書かれていて、「アスパラポタージュ」か「冷コンソメスープ」を添えた「定食」にもできる。
「黒毛和牛ヒレ肉照焼」「タンシチュー」ともなれば、さらにお値段アッパーだ。
「ビーフシチュー」をお願いしました。

「熱いのでお気をつけくださいね」。
ふつふつと沸いて、
みるからに熱々の土鍋が湯気と一緒にやってきました。

じっくりとそして如何にも丁寧に仕込んだ表情のドミグラス。
繊細さをも思う味わいの襞が、折り重なるように舌の上をそよいでいく。
その一方で、しつこさとは違う力強さを食べ口の根っこに湛えていて、しみじみ。


玉葱を20日かけて煮込むらしいという話にも説得力を思っちゃう。
そのドミグラスに包まれ滲みた人参にじゃが芋はほっこりと。
そしてなにより角切りされた牛肉のほろほろと柔らかなこと。
お茶碗のお代わりをお願いすると、こっそり内緒話をするように「鍋に入れちゃってもいいですよ」と女将さん。
なんだか魂胆を見透かされたようで、あ、いや、やっちゃっていいですか(笑)。
では遠慮なく、っと鍋に残した肉片やソースをご飯に絡ませていただきます。

思わず、うへへ、でありまする。
もう一回お茶碗をお代わりして、じゃこと芽カブの佃煮でお茶漬けしちゃう。


都合お茶碗三膳が、するっと入って満足満足。
お茶を啜りながら、お隣さんの「カツレツ」や「コロッケ」を凝視。ふむふむ(笑)。
お世話になった女将さんが、かつて数々の文豪たちにも愛されたという富永町にあった名洋食店「つぼさか」のお嬢さんだという。

“旦那”通いが似合う洋食「みしな」。夜は、予約のみの営業のようです。
「みしな」 京都市東山区二年坂畔 075-551-5561
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