一度お邪魔したことのある桜橋の地物魚専門料理「やつはし」は、残念ながら臨時休業。
某番組登場で俄然人気店となってしまった柳町の「舞子」は、前日当日に予約がとれるような状況ではまったく、ない模様。
前日当日では収まる席がないのは、名のある鮨店も同様で、そうとなれば足を向けたいお店は此処しかありません。
駅前と云ってしまっても言い過ぎではない、
エクセルホテル東急裏手の横丁に点る灯り。“銀嶺立山”を額に掲げた内照看板に、
大衆酒場「親爺」の文字が浮かびます。
ここは素直に「立山」でと思いつつ、
銘酒の並びから選んだのは特別純米無濾過生原酒「弥久(びきゅう)」。グラスに盈盈湛えた命の水を溢さないようにするにはやっぱり、
顔と口とで迎えに行かねばなりません(笑)。
「親爺」でいの一番に註文したいのは勿論、今日の昆布じめ。昆布の旨味が沁みて凝集した味わいにグラスの酒がよく似合います。
処狭しと並ぶお品書きの中に見付けたのが「黒作り」。お隣に居合わせたご隠居さんが、
それも富山の郷土の味やね、と仰る。
ご飯にも合うんだなー。
そう云うを聞いていた女将さんが、
ご飯の小皿を差し出してくれる。
呑みはじめてすぐのご飯に一瞬戸惑うも、
そんな気持ちを吹き飛ばすような美味しさに、
うんうんと頷きます。
予約・問い合わせの電話が時折かかってくる。
受話器をとった女将さんが、
「はい!親爺!」と応えるのが、
やっぱりなんか可笑しい(笑)。
そんな女将さんにこの時季にいただくべきお刺身を訊ねる。
旬な烏賊の幾つかの中でこの日は「あおりいか」。
期待通りのねっとりした歯触りに澄んだ甘味が追い掛けてきます。
そして、この時季、生だからね、と聞いて、
やっぱり今回もいただきますとお願いした「白えび」。
これまた期待に違わぬ、艶ある甘味にお酒が進みます。
暖簾に表記されているように、
「親爺」の売りのひとつが「おでん」。
カウンターの品書きには、
20種類のおでんのタネの名が並んでいます。
残念ながら「かに面」はまだ用意するに至らないようで、
然らばと、同じく時価の「たこ」と「大根」を。
蛸の正体は真蛸の一種「蜘蛛蛸」。
おでんタネとなる蛸の種類も時季や海況で変わっていくのでしょうね。
お品書きの左の隅に小さく書かれている文字に何気に目が留まる。
「カレー」があるんですか?と大将に訊くと、
一瞬の間の後に「ありますよ!」。
なぜか勝手に「あるよ!」と応えられたような気がして思わず、
田中要次の顔を思い浮かべます(笑)。
ちゃんとメニューに書いてあるので、
裏メニューではないのです、と云う大将から受け取るお皿。
牛筋たっぷりで辛さと旨味のバランスのとれたカレーだ。
お酒をいただいちゃった〆には、蜆の味噌汁が胃の腑に沁みる。
これを用意してくれているかどうかって、
佳い居酒屋のひとつのバロメーターのような気がしています。
路面電車行き交う富山駅前裏手の横丁に、
大衆酒場「親爺」はある。
今度また富山に行ったなら、
きっとまた必ず寄ることになるのです(笑)。
「親爺」
富山県富山市桜町2-1-17 [Map]
076-431-4415
http://oyaji-toyama.com/