純手打そば「楽々亭」で奈良井宿の町並みの趣と中乗さん山葵醤油漬屈天婦羅笊の蕎麦

久々の松本から初めましての奈良井宿へと巡る旅。
松本では、美味しい蕎麦をいただこうと、既知のお店「源智のそば」を訪ねるも、早々の売り切れ仕舞い。
ならばと、これまた既知のお店、そば処「浅田」に向かうも、こちらもお店の前に沢山の人を抱えての札止め状態。
嗚呼、なんということでしょう。

松本の定宿に泊まっての翌朝。
松本駅を発ち、塩尻で乗り換えての中央西線で、
トコトコと奈良井宿へ向かいます。

奈良井宿駅に到着する旨の車内アナウンスに応じて、
下車の準備をごそごそとしていると、
ボックス席で向かいに座っていた姐さんから、
声を掛けられました。

奈良井宿で降りられるんですね?
はい、そうです。
でしたらぜひ、
駅近くのそば店「楽々亭」に寄ってください!
「楽々亭」さん、ご存じなのですね?
はい、おススメです。
了解です。
実はもとよりそのつもりだったのです!
ありがとうございます。

お目当ての「楽々亭」は、
駅前と云ってもよいくらいの場所にある。 やはり人気があるのか、
空席待ちの人影がある。
一旦宿に荷物を降ろしてから、
伺うことにしましょう。

旧中山道の宿場町・奈良井宿の町並みは、
往時の面影を色濃く残していて、
噂に違わぬ趣の或るもの。 背後に蒼空と木曽の山々が控えていて、
そのコントラストも、いい。
まずは宿との間をぷらぷらと散策します。

駅前近くへとふたたび戻ってきて、
「楽々亭」の空席待ちの列の最後尾につく。 萌葱色の暖簾が掛かっているのが駅側の入口。
扁額の掛かる障子張りの潜り戸は、
旧来の入口だったのでしょうか。

奈良井宿の趣にもすっと馴染むような、
古民家的設えにそっと和む。 客間の隅に据えられた達磨の右目が入るのは、
どんなことが成就してのことなのだろう?なんて、
そんなことも考えながら、
註文の品の到着をのんびりと待ちます。

蕎麦前はやっぱり、地のお酒がいいよねと、
木曽の酒「なかのりさん」が武骨な徳利で届く。 ♪木曽のナー、なかのりさん
♪木曽の御嶽さんは、ナンジャラホイ。
「わさび醤油漬け」が辛めのひや酒によく似合う。
徳利は「木曽路」のものみたい(^^)。

そば打ち部屋と客間とを仕切る腰壁に貼られた品札で、
「舞茸とこごみの天ぷら」を目ざとく見付ける。 屈(こごみ)は、ちょうど旬の時季だからこそのもの。
有難くいただきましょう。

お待ち兼ねは刻み海苔をいただいた「ざるそば」。 湯掻いて冷水で〆てそして、
笊に盛るその所作が伝わるような盛り付けがいい。
おそらく二八の瑞々しい蕎麦。
肩肘張った求道的そばの気配なく、
素朴にして実に素直に美味しくて、
こっそりと小さく膝を打ちます(^^)。

ご馳走様をしてふたたび、
ゆっくりのんびりと中山道の宿場町、
奈良井宿の町並みを散策します。
一軒一軒、町家の表情を眺めるのもまた愉し。

そして、奈良井宿でお世話になった宿が、
街道の中ほどにある「BYAKU Narai 歳吉屋」。 町のシンボルでもあったという、
創業1793年の酒蔵「杉の森酒造」をはじめ、
4棟の特徴的な歴史的建造物を
全16室の宿屋としてリノベーション。
メインの入口頭上には、酒造店よろしく、
大きな杉玉が掲げられています。

4棟に分かれた、
それぞれに違う間取りの客室のひとつ、
本館であるところの歳吉屋、その百四(104)は、
中庭へと繋がる縁側テラスがゆったりととられ、
そのテラス続きの間には、
元々は茶室だったという半露天風呂。 温めの湯に浸りながら、山々を眺め、
鳥たちの囀りを聴いていると、
なんだかとっても解放された気分になります。

中山道の古の宿場町、奈良井宿。
その入口に純手打そば「楽々亭」はある。 電車内で声を掛けてくれた姐さんにも感謝。
松本で蕎麦にありつけなかった想いなんて、
一体全体どこへやら(^^)。
思い出深い、いい旅となりました。

「楽々亭」
長野県塩尻市奈良井1127 [Map]
0264-34-3199

column/03865