中華そば「登喜和」でチャシュメンチャーハン肉入野菜イタメ秘かに感じる一貫の心得

所沢の旧町に有楽町と呼ぶ地区がある。
近くを流れる東川の向こう側、という意から浦町と呼ばれていたエリアが、大正元年に所沢飛行場(今の航空公園)へ大正天皇が行幸したことを契機に縁起の良い名称にと改称された、という。
そして、町の賑やかさの中心が駅周辺へと移る、ずっとずっと以前には、この辺りがちょっとした歓楽街であったらしい。
周辺には、映画館や飲食店があり、置屋さえもあったと聞く。
今はもうその面影もほとんどないけれど、その経緯が町名に残されていると考え、嘗てはそんな時代もあったのだなぁと思ったもする。

そんな有楽町の一角、薬王寺の門前にあるのが、
中華そば「登喜和」だ。 古色の佇まいの中に真新しい紅い暖簾が揺れる。
店頭では店名を「ときわ」と平仮名表記しています。

拭き清められた朱色のメラミンのテーブル。
その向こうの壁に無垢の板の腰壁が回る。 今まできっと何度も書き換えられてきたであろう品書きが、
その上の壁を飾っています。

なみなみとスープの注がれた「チャシュメン」。
丸く敷き並べた焼豚の頂には、なるとが一枚。 嗚呼、そうそうそう。
こふいふ中華そばが食べたかった、のです。

そうとなれば、
「チャーハン」と一緒に、
「ラーメン」をいただきたくもなってくる。 美しき”おたまのかたち”。
邪魔な濃い味などない、でも不足もない炒飯。
そうだ、これでいいのだ(^^)。

そうとなれば、
チャーハンと一緒に、
「肉入野菜イタメ」もいただきたたくなってくる。 野菜の炒めは勿論、シャキシャキ。
そしてその炒めを過不足なくフォローする味付け。
白飯との相性もきっといいけれど、
チャーハンとのコンビが相応しい。

そうとなれば、
「肉ニライタメ」はどうでしょうとお願いする。 するとそれは、韮が少し多めかな?
の「肉入野菜イタメ」というご様子(^^)。
チャーハンのどんぶりには、
三方に「登」「喜」「和」と店名が印されているけれど、
炒めものの皿では、
縁を飾るように帯状に「登喜和」と印されている。

然らば「中華丼」はどんな佇まいなのでしょう。 中華あんのとろみも控えめで、
スープの出汁と塩加減とですっと食べさせる、そんな中華丼。
大きめ表示の店名が縁を丸く囲んでいて、
チャーハンのとも炒めもののお皿とも違うのが面白いね。

ふとそんな気分になって、
「五目焼ソバ」を註文してみたならば、
そこにはなんと伊達巻と蒲鉾が載ってきた。 あれ?今って正月だっけ?と思ったのは内緒の話(^^)。
焼ソバでも決して濃過ぎない味わいにニンマリとする。
そうだ、これでいい、いや、これがいいのだ。

西側のアルミサッシの内側には、
使い込まれたリベット打ちの岡持ちが置かれてる。 扉の前には、おそらくマルシンの出前機を装備した、
歴戦の勇者たるカブが出陣を待っています。

所沢の旧町有楽町は薬王寺の門前に、
中華そば「登喜和」はある。 醤油や辛味、強い味の多用は不作法なり。
「登喜和」のお皿たちからは、
一貫したそんな心得を秘かに感じる。
平日のおひる時のみの営業でも、
ご高齢にはしんどいこともあるでしょう。
ましてや、出前なぞも困難となりましょう。
一日でも長くと願うのは余計なお世話にも思うけれど、
今年の初夏の暑い日に、
ビールと餃子と冷しソバをいただきたい。
そんな風にも思っています。

「登喜和」
埼玉県所沢市有楽町3-6 [Map]
04-2922-3182

column/03858