試験場へは京急の鮫洲駅が最寄り駅。
りんかい線の品川シーサイド駅やモノレールの大井競馬場駅も徒歩圏内だ。
地図を眺めると、大井町からも歩いて歩けないこともなさそうだと、大井町駅の改札を出る。
わざわざ東小路の狭い路地を行くのはお約束(笑)。
ひな鳥「そのだ」の前を通り、心地よい陽射しに照らされながら仙台坂の脇をのんびりと歩きます。
すんなりと国際免許を手にして今度は、
大井町や品川とは逆の方へとぷらぷらと。近くを流れる運河の土手に出て、
ぼんやりと水面を眺めたりなんかして。
立会川の駅も近づいてきた辺りで、
暖簾の前に立つ数人のひと影を目に留める。なかなか風格のある佇まいであるねと近づくと、
二階窓の欄干の角に立派な造作の行燈が吊るされていて、
“蕎麦”に円で囲んだ”吉”の文字がある。
玄関の格子戸の脇には石柱が鎮座していて、
どうやら「東海道」と読める。成る程、店の前の何気ない通りが旧東海道で、
由緒ある街道に接して店を構える蕎麦店ということになる。
ちょうど席も空いたようなので然らばと、
一階のテーブルのひとつに居場所を得る。お斎らしき喪服姿の一団の様子を眺めていたところへ、
註文していた「かもせいろ」の膳が届きました。
若き蕎麦粉を思わせる若草色の端正な蕎麦がいい。粉の風味を端的に感じさせる蕎麦って、
ありそうで案外多くないものね。
つけ汁の椀は初めてみるスタイル。焼いた後、汁の中でちょっと煮立てたつけ汁が多いのに対して、
焼き炙った鴨肉や南蛮をそのまま器にもっている。
なんだかこう、老舗の流儀と気風が感じられていいよね。
ふっくらした鴨肉を風味ある蕎麦と一緒に美味しくいただきます。
裏を返して、窓辺のテーブル席へ。こふいふ風に気取らず構えず、
かつしっかりとした風格を備える設えの設計は、
どんなひとが担ったのかなぁなんてふと考えたりいたします。
お隣さんが召し上がっていたどんぶりの匂いに抗えず(笑)、
「カレー南蛮」をご註文。カレーの器にして美しき膳の姿。
カレーの汁を纏ってもそこはかとなく風味を感じさせる蕎麦。
汁のとろみにもどことなくちょっとした品のようなものがあるのは、
どうしたことでしょう。
天保7年(1856年)創業の蕎麦会席・十割手打蕎麦の店「吉田家」。Webページを読むと、同じ旧東海道沿いの鮫洲で創業したらしく、
その後大正元年に、鮫洲から今の北浜川に移ったとある。
160年に亘る時間が伊達じゃないことを感じさせる瞬間を味わいに、
また足を運びたいと思います。
「吉田家」
品川区東大井2-15-13 [Map] 03-3763-5903
http://yoshidaya-soba.com/