今や隠れた人気店になってしまった天ぷら「小野」の入るビルや小さな紅いファサードの中華料理店「紅琳飯店」がある辺り。
喫茶店「SONO」との間にあったクリーニング店がいつの間にか「えびすDON-MARU」なる持ち帰りドンブリの専門店になっていたりするその一角。
和菓子「青柳」との間の路地を入った左手に、確か「香庵」という饂飩か蕎麦の店の小さな看板がちょこんと突き出していました。
ただ、営業しているのかしていないのかよく判らない状況で寄れないでいる内になくなってしまっていました。
いよいよ暑さを感じるようになってきた五月晴れの或る日。
「SONO」の裏手の黒塗りした家屋の前に「沖縄料理」と書かれた幟がはためいているのを見つける。新しいお店が出来上がっていたようです。
早速、狭くて急な階段を上がった二階のフロアは、階段の左手にあって、そのまま真っ直ぐすずらん通りが見通せる。
「SONO」のあるビルをL字に囲むような造りになっているのです。
一番奥、すずらん通りを硝子越しに見下ろすテーブルの丸椅子に腰掛けて眺めるお品書き。さすがに切子のグラスという訳にいかないものの、国際通り辺りでも売っていそうな蒼のグラスでお冷が届きます。
まずは「ポーク焼き定食」を所望する。ポークは、ご存知「スパム」や「チューリップ」といったランチョンミートのこと。
缶詰にして塩蔵品のような塩分があるので、塩辛くなければいいなとシンプルに刻んで両面焼きした「スパム」。添えてくれたケチャップを適量つけて口に運ぶ。
最近は「スパム」も減塩なのだなとちょっぴり感心しながら、海ぶどうの載ったサラダと併せて食べ進む。
スパム缶が意外と安くないことに驚いた、牧志市場近くのお店を思い出します。
一週間後のおひるには、奥サマに「沖縄そば・ゴーヤチャンプルセット」をと声を掛ける。ご主人が竹富島の出身と聞いていたので、もしかして八重山そばの麺かと半ば期待していたものの、やっぱり普通の平打ち麺。
どふいふ訳か那覇を経由する必要があるようで石垣から直送できず、運ぶの時間もお金も掛かってしまって現実的でないのだそう。
「ゴーヤチャンプル」は、優しいお味。やっぱりご当地で採れたゴーヤが当然のように似合うけど、それもまた容易なことではないのでしょうね。
すずらん通りの一隅に沖縄料理「わがん」ができた。「わがん」は「和顔」で、みんな和やかに笑顔でいたいね的な意味合いからだそう。
那覇に本店があって、その店の東京進出店ということにもなるらしい。
でも、折角といったら失礼だけど、竹富島ご出身の料理の担い手はなかなかいないと思うところゆえ、もっとそんな色が強く出てくると嬉しいなぁとも思います。
夜には、生三線と生島唄を聴きながら沖縄料理がいただけるようですよ。
「わがん」
中央区八丁堀2-15-5 2F [Map] 03-6675-8314