斜向かいの中国屋台「十八番」のお昼の客入りは、ちょっと減ったような余り変わらないような。
そのお隣のカレー「LATINO」や裏通りのBrassere「Izumi」の状況は如何なのかちょっぴり気になるところ。
気になるといえば、そんな新川二丁目信号近くに、ずっと気になっている店がありました。
へぎ蕎麦「がんぎ」と「ポニー食堂」の向かい側。
八重洲通りから元麒麟麦酒の区画に沿って、
横丁に入ったところにある草木に包まれた洒落た民家のような佇まい。
おひる時には開いていない扉に近づいてみると、
その扉の上には「FUKUSAKO」と切り抜いた鉄板が店の名を示していました。
puzzさんと四葉さんとで繰り出した梅雨の夕方。
開け放してある扉から恐る恐る中を覗くと、
柔和にして快活なるお兄さんが迎えてくれる。
予約の名を告げると、
左手にあるテーブル席へと案内されました。
佇む雰囲気はまさに森の中。カウンターの周囲やバックバー、
テーブルの周りに木立が据えられていて、
空気さえ爽やかなような気がしてきます。
そして、カウンターの中にいる御仁が福迫氏そのひとです。
もうずっと前のことなので、
福迫さんは勿論憶えていないと思うけど、
恵比寿のお店「福笑」で3度ほどお会いしてる。
インターホンで来店を告げるお店としても、
そして、店内に大振りな木立が配され、
時には桜の木まで拝めるお店としても、
そして、超が付くほど新鮮な魚介食材で、
料理を繰り出すお店としても、印象的なのでありました。往時から独特のオーラを放つ福迫さんと、
こんな場所で再会できるなんて、
なんだかちょっと不思議な感じもいたします。
上にはお食事9,000円コースとか、
大人の飲み放題1万円、1.5万円といったコースもありますが、
ここは可愛くお食事6,000円コースといたしましょう。
サッポロの「白穂乃香」なんて生麦酒でまず乾杯。
最初のお皿が「心太」であるところからいきなり福迫さんらしい(笑)。
訊いて確かめてはいないけど、
きっと天草などを煮出してつくった自家製なのでありましょう。「新じゃが」は、何気なくもほっこりしっとり滋味がいい。
野菜中心のコースには、日本酒か焼酎か。
お任せで日本酒をいただく流れにいたします。空色の一升瓶は、魚沼清酒豊醇無盡を謳う「たかちよ」。
新潟のお酒らしいまったり成分を含んだ呑み口の純米大吟醸だ。
大根とお揚げを炊いた小鉢は、一見おウチのお惣菜。
選んで仕入れた野菜を敢えてあまり手の込んだカタチにしないという境地がそっと滲む。金沢から届いたという「トマト」も何気ないけど、
甘味を酸味のバランスのいいトマト。
最近のトマトって甘さに走り過ぎなきもしたりする。
くたっとさせずに、大根の歯応えを残した仕立てが福迫さんの拘りなのでしょう。山口からやってきたという「白バイ」は、
くるっと綺麗に身が抜けるように煮付けているよな気がします。
自然栽培の「人参」は当然のように皮つきのまま。
トマトと同じく、如何にも甘いような人参ではない何気なさがここにもある。「車麩」も過ぎない出汁を煮含めていて、すんなり和む。
この辺りの良さは若者には分からないかもしれません(笑)。
日本酒に合わない訳のない「麦烏賊」は、
小田原の産だという。
福の笑うイラストが、酒器の底で微笑みます。「椎茸ステーキ」も醤油で焦がしたり、
一味を振って辛くして等の細工はなし。
肉厚の椎茸の魅力をそのまま喰らう感じの仕立てであります。
「煮かぼちゃ」の見栄えはまるで、
夕張メロンのそれのよう。「長ひじき」は成る程、
一風変わった麺料理のよう。
いつものひじきとはちょと違う歯触りが愉しめます。
浅く炊いた「茄子」に「帆立」。敢えて選んだと思しき小さめの貝柱が、
優しい滋味をそっと伝えてきます。
しらすおろしでひと呼吸おいて「アオサの雑炊」。アオサの香りに忍ばせた梅肉の酸味が好相性。
無作法にも一気に喰らってしまいます。
最後の小皿は「レモンポテト」なるデザート。ギリシャ料理のそれではなく、
食べて成る程の檸檬風味のマッシュポテト。
風変わりな口直しにも使えそうな気もします。
新川の横丁にひっそり佇む、
酒邸「FUKUSAKOフクサコ」。お店の真ん中にあるのは、
福迫さんの慈愛を含んだような笑顔。
“身土不二””一物全体”を基本理念に掲げ、
旬の国産食材をその恵みを丸ごといただけることを心掛けているという。
日頃どれだけ、
食品添加物や化学調味料に慣らされているのか、
気づかされる瞬間がある。
恵比寿の頃のグイグイくる食材の魅力の押し出しが昇華して、
よりシンプルに食材の本来の旨味を重視するカタチに辿り着いたようです。
「FUKUSAKO フクサコ」
中央区新川2-8-8 [Map] 03-6280-4449