そう思っていた矢先に、グヤ父さんが闖入していて愉しく読んだ記事がある。
店の名を「津多屋」といって、”お茶の間、おばちゃん付き!”が、父さんが評したキャッチフレーズ。
それは、横浜赤レンガ倉庫の「chino-ma」のようにちょっと小洒落たカフェなんかでは決してない。
どんなことになっとるかこの目で確かめようと、小伝馬町駅のホームへと降り立ちました。
所在地へ着いてみるとそこには、ビルを背中にし、両サイドを駐車場に挟まれた二階建の家屋がある。なんだか解体して一筆の敷地にしてビルにする日を待たれているような気もします。
暖簾を払ってサッシュのドアを開けるとグヤ父さんのレポート通り、いきなりそこに厨房がある。
お邪魔しまーすと入っていくと横からオヤジさんが奥へどうぞと促してくれる。
云われるまま上がり込んだ処がまさに、お茶の間なのであります。硝子越しに、今通ってきた厨房の様子が覗けます。
よっこらしょっと座卓に座り込むと、正面に茶箪笥が見える。草臥れた感じがなかなかいい味わいです。
するとそこに別のお客さん達がやってきて、勝手知ったる我が家よろしく、階段を二階へと上がってゆく。あ、一階のこの茶の間だけが客席ってことではきっとないもんね。
オバちゃんが淹れてくれたお茶を脇に、卓上の割り箸袋を眺めると、表側には肉専門の店「津多屋」、裏側には「梅澤商店」の名があります。肉屋さんとしては、梅澤商店で商いしているんでしょうね。
肉専門店ゆえ、肉料理のオンパレードでしょうと、ビニールファイルに挟んだ手書きメニューを眺める。でも中には「エビフライ」なんてのも紛れ込んでいて、微笑ましい。
さて、そんなメニューから選んだのは、「豚生姜焼き」。
「ヒレ生姜焼き」が別にあるってことは、豚ロースなんだろなとあたりをつけて。ただそれは若干予想に反して、玉葱やピーマン炒めを載せた絵面でやってきました。
お肉が結構硬めかもねと咀嚼しながらそう思う。タレは後から方式のような気はするんだけど、その辺りはどふいふ加減なのでしょう。
いえいえ、オバちゃんオジちゃんの作る料理に文句はありません。
別の晴れた日にふたたび訪ねると、今度は既に一階のお茶の間に先客たちがいらした。
これ幸いと(笑)、二階への階段をゆっくり上がります。
すると、視線の先に映ったのは、暖かそうな炬燵のこんもり。振り返った階段の踏面は、何人もの足で綺麗に磨かれていました。
二階には続きの間があって、三卓ぐらいは置けそうな感じ。
炬燵入れましょうねと、電源をいれてくれたオバちゃんに「ロースかつ」をお願いします。
炬燵の一角に「ロースかつ」が来た。お店でこふいふ光景って、そうそう見れるものでもないよう気もします。
衣とお肉がみっしり噛み合って、何処にも遜色のないロースかつ。例によって、お醤油と練り芥子少々にて有難くいただきます。
小伝馬町の裏道に肉専門の店と謳う「津多屋」がある。如何にも”肉専門店”らしい料理がある訳ではなさそうだけど、逆にそれがお手製を思わせて和ませる。
盛り付けなんかしているところで、お代を払うって場面もちょと新鮮。
ぜひ一度、小伝馬町のオバちゃん付きお茶の間を訪ねてみませんか(笑)。
「津多屋」
中央区日本橋本町4-9-6 [Map] 03-3661-7638