とっても久し振りだったのだけど、小田急とJRとを結ぶペデストリアンデッキのあたりを歩くと、なんだか賑やかな大きな街を闊歩しているような気にさせる。
川崎や横浜に喰い込んだ形で東京の隅っこにある町田もいまや、人口42万人を超える街なのですね。
そんな町田を離れ、横浜線で菊名に出て、東横線の武蔵小杉で途中下車しました。
武蔵小杉に降り立つのもこれまた久し振り。
南武線側の北口へと廻って、ロータリーを渡ったところでふと振り返る。ああ、これが武蔵小杉再開発の象徴とされるタワー群でありますか。
そんな再開発の図を背にして東横線の高架沿いを進んで脇道を覗き込む。串揚げの店なぞの赤提灯の灯りが嬉しい道を歩きます。
その先左手に見つけたのが、串焼「文福」本店の袖看板。
金文字の揮毫の粋な看板と縄暖簾が迎えてくれます。
お店の兄ちゃんに一本指を立てると、一瞬ムムムという表情になって、御予約のお時間までの一時間くらいでよろしければと云う。
はい、勿論、そのようにと御予約席に収まります。周囲はその通り、ぎっしり満席。
悪くないタイミングで辿り着けたようです。
まずは呑み物からと「生ホッピー白」を貰う。きっと「ホッピー仙人」同様に、樽からちゅるちゅるジョッキに注いだホッピーでできている。
串焼きの煙を眺めながら傾けるは、「文福」と刻まれたジョッキ。
なんだかちょっとメロウなお味、そんな気がします。
ここ「文福」のスペシャリテが「元祖カレー煮込み」。目の前のレンジでチンした器は勿論、器ごと熱い。
その名の通り、濃密なカレーで煮込み和えたモツ、というよりモツ入り焼きカレーといった風情のもの。
カレーの中からモツ以外に豆腐も顔を出したりする。
ホッピーのツマミにもいいし、白飯よこせと叫んでもよさそう(笑)。
ちょうど目の前で串を載せた焼き台が煙と湯気をあげている。職人さんの手際を眺めているだけで愉しくなってきます。
届いたお皿は、「カレー煮込み」とセットのおまかせ「焼きとん」。かしら、たん、はつ、こぶくろ、レバー、しろの6本が綺麗に並びます。
キリッとしたタレを含んだしろやレバーが柔らかく旨味を内包していて、いい。練り芥子をちょんとつけるとまたオツな感じになりますですね。
ホッピーをお代わりしてお願いしたのが、そっれってなーにの「玉三郎」と「イタリアン焼き」。「玉三郎」はやっぱり、鶉の玉子をタレに漬け込んで焼いた串。
「イタリアン焼き」は、大き目のプチトマトに極薄切りのベーコンを捲いた串。
トッピングの粉チーズとトマトからの連想が”イタリアン”なのでしょう。
なるほど、ぷちっと弾けるトマトの甘酸っぱ熱い汁に粉チーズの風味が相俟って、旨いであります。
「かえるのへそ」は、訊けばご存知烏賊の口の串。所謂「いかとんび」の歯の部分を外したものを串焼きにしてくれている。
噛めば心地いい歯応えで、小さな身に凝縮した烏賊の旨味がひと粒ひと粒味わえます。
「ピーコン」は、その名の通り、ピーマンのベーコン捲き。
ただ、よくありそうなベーコン巻きの串ではなくて、中に蕩けるチーズとコーンを潜ませていて、それを半裁して届けてくれる。焼いたピーマンとベーコン、そしてチーズの取り合わせが不味かろう筈がありません。
二杯目のホッピーもなくなろうとする頃に、そろそろお時間が近づいてきましたとお兄さんのアナウンス。
然らばと、〆のお食事を所望する。
岩のりの「おにぎり」と味噌汁で小さな小さな大団円。ぱりぱりの海苔で包んだおにぎりの中から岩海苔が顔を出す。
うんうん、ご馳走さまでした。
武蔵小杉北口の裏道に串焼「文福」がある。「文福」はその人気ゆえか、南口の方にも姉妹店を展開しているらしい。
人気の程は今宵の賑わい具合や常連の多さでも様子が判る。
こんなエリアはぜひ再開発しないままで置いておいて欲しいなと、そう思う宵の口でありました。
「文福」
川崎市中原区新丸子町915 [Map] 044-722-8828