裏道や路地が好きなこともあって、歩いていると自然と裏へ裏へ、横丁へ脇道へ路地へと足が向いてしまう所為もあるかもしれません。
決して陽の当たる場所から逃れようとしている訳ではないのだけれど(笑)。
でもまぁ、銀座の真ん中で吞むなんて機会も最近ではめっきり少なくなりました。
それはまだ、灯りを落としてしまった三原橋地下街が解体のために周囲を囲われたばかりの頃。白い万能鋼板の囲いの中に「シネパトス1・2・3」の看板がにょっきりと立っていました。
季節料理「三原」は今、コリドー通りに移転しているようですね。
Y字になった、嘗ての三原橋地下街入口を背にして新橋方向へ。
何故だかふと、ずっと昔になくなってしまった串焼きの「はやし」のことを思い出す。
串にした具材があれこれ並んだ笊からお好みで選び取って、自ら囲炉裏端で炭焼きするスタイルが斬新だった。
夏場は暑くて大変だったけどね(笑)。
そのまま六丁目に差し掛かると、左手はカラオケ店の入る銀座ウォールビルで、右手は東京銀座ビルディングという雑居ビル。其処で、とうとう銀座にも出現したという中華そば「伊藤」のスタンドサインをみつけました。
一方の入口からそのまま地階へと降りると、正面に蛇腹に開きそうな硝子戸が並ぶ。
「伊藤」になる前はなんだのかなぁと思いつつ重たい扉を引き開けます。
入って正面に券売機。
まずはやっぱり、基本形の「中華そば」と思いつつ、指先は「肉そば」のボタンを押していました(笑)。
カウンターの隅に腰掛けて出来上がりを待ちましょう。
細麺ゆえか、「伊藤」のどんぶりの出来上がりは遅くない。お久し振りの「肉そば」中盛りは、縁の広い、レストランのボウルのようなどんぶりでやってきました。
もう見ただけで、しゃくしゃきした歯触り歯応えとぷわんと香る粉の風味が想像できる麺。中盛りゆえの盛り上がりを一瞬凝視してしまいます。
右サイドでは、叉焼とスープの表情を愛でる。しっとり脂ののった様子の焼豚が半身を浸しているのは、煮干特有の浮遊物を浮かべたスープ。
正直なところ、北区豊島で初めて出逢った時程の感激はないけれど、濁らぬよう丁寧にとったのであろうスープと硬めに湯掻いた細麺とのコンビは申し分ない。気がついたらどんぶりがすっかり空になっていました。
血圧気にしないといけないお年頃なのにぃ(笑)。
日を改めて、今後は「比内鶏肉そば」を中盛りで。今や定番の低温調理を思わせる比内鶏は、パサつくことなく柔らかに味蕾をそっと攻める。
安定感のある煮干そばのスープから少々コクを増した感じのスープ。
ああ、またスープ増しにし損ねたと思いつつ、無化調にして如何にも旨味が凝集したようなスープというのは、なかなか難しいのかもしれないな、なんて思ったりもする。そして、博多ラーメンのそれとはまた違う、エッジの利いた極細麺の魅力は、今日も当たり前のように此処にあります。
北区豊島に赤羽、浅草。
自家製麺にして煮干中華の「伊藤」が銀座にもある。いつの間にかラーメン激戦区となった銀座六丁目十二番区画にあって、素朴な一杯が劣勢に立たされてはいかないか、少々心配でもあります。
「伊藤」銀座店
中央区銀座6-12-2 東京銀座ビルディング B1F [Map] 03-6274-6445