中華そば「伊藤」浅草で 中華そば煮干出汁の魅力と難しさを想う

asakusaito.jpgラーメン業界で知るひとぞ知るイラストレーターといえば、ラ部青木健さん。 その青木さんがある日こんな風に呟いた。 通り過ぎるのは、「ここラーメン屋さんかなぁ」「違うっぽいよ」の声ばかり。 いいえ、ここは有名ラーメン店の支店ですよ! そこで思い浮かべるのは、 王子神谷の煮干中華そば「伊藤」だ。 看板もなく、無愛想なアルミの引き戸に包まれたファサードなのだものな~。
でも、青木さんは「支店ですよ!」と云っている。 ってことは、赤羽の店で呟いているのかと思えば、然にあらず。 つまりは、王子神谷でも赤羽でもない処に彼の中華そば「伊藤」が出来たってことなのです。

おおおそれは、という勢いで早速、浅草に足を運ぶ。 場所は、賑やかな雷門~仲見世方面とは違う、駒形二丁目江戸通り沿い。 「駒形どぜう」の斜め向かいといえば、イメージし易いかもしれません。

10席ちょっとの小さな空間。 入口に置かれた券売機で、まずはシンプルに「中華そば 中」。asakusaito01.jpg「伊藤」の原点の表出は、質実なる普通盛り「中華そば」600円にあるのだけどね、と呟きながら受け取るどんぶり。

如何にも煮干出汁由来の色合いのスープにストレート細麺が泳いでる。asakusaito02.jpg蓮華のスープに近寄ると、より鼻先を擽る煮干の香りがより強まる。 ズッと啜るスープ。 王子神谷での初めての出会いの感激には及ぶものではないけれど、ああ、いいね。


10日と空けず、浅草で道草。 今度はちょっと奮発して、「肉そば」+「スープ増し」。asakusaito03.jpg質実なる「伊藤」の中華そばとは若干ノリが違ってくるものの、ニボニボスープをたっぷり愉しみたいものね。

ただ、この晩のスープは、エグミが強い。asakusaito04.jpg煮干くさいのは全くもって厭ではないし、むしろ歓迎してさえいる。 ニボニボ銀鱗ハードバージョンとしてニヤニヤと愉しめる。 でも、ちょっとなにかの加減でバランスを欠くと、折角の煮干の旨みをただただ真っ直ぐに味わう状況からズレるのかもとも思う。 そんな繊細な難しさがあるからこそ、感激もあるのだね。

中華そば「伊藤」といえばやっぱりこの、 加水の少ないポキポキッとしたストレート麺。asakusaito05.jpg粉の風味が素朴に伝わる、美味しい自家製麺だ。

質実なる煮干し中華そばの系譜、「伊藤」の浅草の店。asakusaito06.jpgぜひに是非に、よりストイックにより繊細にスープの仕込み仕上げに入魂して欲しい。 そして、もしもこれ以上支店が増えるようであればそれは、何をか云わんや、とも思います。

口 関連記事:   中華そば屋「伊藤」で 質実なる潔さと大盛りつゆ増しへの欲求(09年04月)   自家製麺「伊藤」で 煮干し出汁中華そば自ずと想う親仁との比較(10年08月)


「伊藤」浅草店 東京都台東区駒形2-6-9 [Map] 03-6802-8226
column/03194