四条通りが高瀬川を渡る小橋のところから河原町通り側の小路を往くと、京つけものの「村上重本店」の暖簾が近づいてきます。
その建物に沿うように、そのまま左手の路地に進むと、そんな狭い路地に空席待ちらしき行列がある。
老舗洋食「コロナ」に並ぶ皆さんの目的はやはり、有名な玉子サンドでしょうか。
オジイちゃん店主に逢うことも含んでいるのかもしれませんね。
この晩お邪魔したのはその「コロナ」ではなくて、
「コロナ」のお向かいにある釜めし「月村」。
山葵を解しつ、すすっと箸を割り入れて、あんを絡めていただけば、ほふはふ。
えび芋のふっくらした滋味に葛に含む旨みがたっぷりと相乗してくれる。
妙な品の良さとは別の魅力があるのです。
底の方で待ち構えていたのが、ぐじ(赤甘鯛)の身。
その身のほの甘さもまた、意外と強めに味付けた葛あんと互いを引き立て合っています。
はんなりと丁寧に応対してくれる女将さんに〆にとお願いしていたのが、「かき釜めし」。
陶磁器の釜の蓋をぱかっと開ければ、立ち昇る湯気。
そこにはぷっくりした牡蠣たちがごろごろっと待ち受けていました。木屋町の細い路地に灯りを点す、釜めし「月村」。
所謂おばんざい料理屋とはちょっと違う風情を思いつつ、それでも間違いなく家庭料理の延長線上にあるような、そんな不思議な印象を抱かせます。
「月村」には、釜めしだけの客もあれば、じっくり呑もうかという客もいる。
狭いお店に滞在時間の違う客たちが訪れるせいもあってか、予約を入れて満席の不安なくお邪魔することは難しいようです。「月村」 京都市下京区西木屋町四条下ル船頭町198[Map] 075-351-5306
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