青山霊園脇の「鹿角」を離れて、
霞町の交差点を渡り、アマンドを回り込んで、
西麻布の通りを進む。
カウンターでもうちょっと呑もうと訪れたのは、その通り沿いの1階にあるバー。
通りから店内の様子が見渡せるバーというのは、そう多くない。
扉の透明硝子に刻まれているのは、
「lii」という記号。
ゴジュウニバン、と読むようです。
硝子扉を開け入ったバーの雰囲気は、籠るようなものではなくて、和やかな空気。
カウンターの一番手前に腰を据えてふと入口を振り返ると、通りを行き交う男女の姿が硝子越しの風景になっています。
あ、そうそうと思い付いて、モーツァルトリキュールはありますか、と訊く。
すると、ゴールドならばございます、とバーテンダー。
では、とおまかせで、
チョコテルと洒落込みます。
バーテンダーが取り出したボトルは、
ヘーゼルナッツのリキュール「フランジェリコ frangelico」。
なるほど、チョコレートリキュール×ヘーゼルナッツリキュールだと考えると相性の良さがイメージされてくる。
そこへ、定番ラムの「マイヤーズラムMYER’S RUM」、
サトウキビのシロップ「Carib CANADOU」と業務用のミルクとで、
シャカシャカとシェイク。
おー、うまーい。
ふたつのリキュールの相乗の背後でラムの風味が多層な奥行きを齎してくれている。
チョコとナッツの名コンビが、甘ったるいノリでなく、洒脱なデザートとして愉しめるグラスがあるなんて、ね。
もう一杯だけ、とお願いしたのがグラッパ「カポヴィッラCapovilla」。
ちょうどボトルの最後のところというのもあったのか、たっぷりと注いでくれた透明な滴。
濃縮した果実香が柔らかにそして圧倒するように揮発する。
忽ち葡萄の残り香アロマに脳幹が巻かれはじめて、酩酊の淵が近くなる。
ああ、このまま倒れるように眠りたい(笑)。
Bar「lii(Gojyuni-Ban)」の店の名は、カクテルの通し番号52番に因んでる。
西麻布の老舗バー「ウォッカトニック」が生んだといわれるカクテルの符号を店に名に使うアイデアとそれをローマ数字に置き換えるセンスにもニンマリです。
□関連記事:
BAR「WODKA TONIC」で 暗がりのオーセンティックひそひそ話(02年08月)
秋田の味「鹿角」で 子持ちずし鰰とんぶり長芋きりたんぽ鍋(10年01月)
「lii」 港区西麻布4丁目10-3 ヴィラ麻布1F
[Map] 03-6861-0052
column/02929