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やきとり「忠弥」で 煮込みぺてんツクネがつイケナイ特製カクテル
もしかしたらもう、10年も前のことになるかもしれない。
祐天寺に妖しい焼鳥屋があるので行こうというお誘いにウキウキとのっかって、その日の仕事を早仕舞い(笑)。
夕方5時前に祐天寺の改札に集まって、高架の脇を学芸大学方向へ。
まだ陽の落ちない住宅地の道路に「やきとり」の文字が見えてくる。
暖簾の先に覗く「忠弥」のカウンターは、ぎっしりと満席だったのです。
3時過ぎまでの所用を終えて、渋谷から東横線に乗ったところでふと、も一度「忠弥」に寄ってみようというアイデアが浮かぶ。
慌てて下車して、再びあの時のルートを辿ります。
紺の暖簾の前までやってきて去来するのは、まさか!という気持ちとやっぱり!という気持ち。
平日の4時前にして、いつぞやと同じぎっしりの満席なのだ。
折角なので、ちょっと待ってみようと入口のところに佇みながら、開けっ放しのドアから店の中を覗き込む。
壁には、「定価表」の横に「本日の入荷品」の品札が並ぶ。
もう既に、「ハラミ」「たん」「てっぽう」「シビレ」、「牛レバー刺身」の札が”売切”表示になっている。
以前お邪魔したときも、嗚呼もうなくなっちゃってる串があるンだー!と愕いたことを思い出す。
ひとりの先客さんが丸椅子を後にしてくれて、そこへするりと入り込む。
真剣な表情で塩を振り、串の表情を見詰めるオヤジさんも目の前だ。
ビールを貰って、「煮込み」の小皿を受け取る。
「忠弥」の「煮込み」は、なんともあっさりとした塩仕立て。煮込んで煮崩れてコッテリしはじめたあたりの煮込みも悪くないけれど、
そっちの系統とは明らかに違う。
臭みに配慮する必要がないほどの、仕入れと下処理に対する自信の発露なんだろね。
メモに鉛筆で「ぺてん」「ひもスタミナ」などと書いて、忙しなく立ち動くオバチャンに渡す。
オヤジさんが、それも書いといてもらわないと困るじゃねーかという調子で「タレ?塩?」と訊く。
慌てて全部塩で!と応じて、そりゃそうだねと肩を竦める。
兄さんに「カクテルを」とお願いして、手渡されたグラスには妖しい褐色の液体。
以前訪れた時には、この「忠弥特製カクテル」は一体なにで割っているのだろうととってもとっても不思議だった。
その後歳月を経るうちに、例えばキンミヤに合わせる梅シロップの存在も知った。
でも、この特製カクテルは、ただ焼酎を梅シロップと炭酸で割ったものとはなんか違うなぁと思いながらまたツーと呑む。
ジンジャーエールのような薄いコーラのようなホッピーもちょっと入っているような。
甘さが独特でもあるなぁと妖しい液体を見詰めていると、お隣の姐さんが「これを入れるとまたいいのよ!」と黒ビールを注いでくれた。
へーと思いながら再びツーっと呑むと、なるほど呑み口の輪郭がすっきりとしてさらに呑み易くうまくなる。
でもあんまりツーツー呑めちゃうのも、ヤバくないかなぁ(笑)。
何気に見上げた長押の上。
「ぺてん」から「チレ」「シビレ」、「たま」「わっぱ」「どて」までの部位を説明した「やきとり談義」を収めた額が目に留まる。
どこかで見たことがあるなぁと酔い始めた頭で思い巡らす。
あ、なんだ、中延の同じ名前の「忠弥」でのことじゃん。
メニュー構成といい、カクテルといい、祐天寺と中延はなんらかの繋がりのある兄弟店と考えるのが順当なところだね。
コリコリとした「はつ下」や「がつ」、「ツクネ」あたりも塩でいただいて、カクテルをまたまたツーっと。あはは、酔って顔がちょっと紅潮して火照ってきた感じ。
そろそろお暇しましょうか。
祐天寺の住宅地で不動の人気店、やきとり「忠弥」。
常連率は高いけれど閉じた雰囲気ではなくて、一緒に呑んじゃおうぜという熱気と大人の配慮が同居していて、居心地がいい。ほろ酔いで暖簾を出てもまだ明るい。
そんな時間からじっくり呑んじゃう、ちょっとイケナイ気分がいいのだなぁ(笑)。
そして、「ハラミ」や「レバ刺し」を口にできる日がくるかなぁ。
口関連記事:やきとり「忠弥」で 旨いハラミほっぺ大串焼ぺてん特製カクテル(07年04月)
「忠弥」 目黒区五本木1-32-28 [Map] 03-3713-7205