ちょっと早い時間帯だし、まぁそう混んではいないだろうとガラッと開けた引き戸の向こうで、
カウンターもテーブルもびっしりと客で埋まっているのには正直意表を衝かれた気分。
新川の裏通りのとんかつ店「美濃屋」でのおひる時。
ここ、ここ、っとオバチャンにカウンターに残っていた席に呼ばれ、腰を斜めに入れてひと安心。
油鍋の前に陣取る大将は、如何にも柔和な表情で、揚げ上がりをスタッフに知らせる口調も上品にして丁寧。
威勢のいいのもいいけれど、こういう雰囲気の板場の方がカウンターを囲む客たちにとっては心安らぐものですね。
お品書きは、「ロースカツ定食」に始まり「盛り合わせ定食」に至る、全10種
。
その中からありそうでいて意外となさそうなフレーズ、「キングサーモン定食」を選んでみました。
「生姜焼定食」以外はすべてフライもので、この定食もキングサーモンのソテーとかじゃなくて、フライ。
「はい、どうぞ」とカウンター越しに手渡されたお皿の上には、
素揚げした人参の華が咲く。
フライの隙間から覗くのは、ピンクがかった淡いオレンジの断面だ。
さくぅぅという歯触りと共に噛むサーモンの身は、パサつくことなくしっとりとしていて、時にジューシーであったりもする。
揚げ過ぎてはこうはならんだろうなと思いながら、また次の一片に手を伸ばす。
ちょっぴり醤油を垂らすぐらいが程のよい、素朴にしてホウホウと頷くよなフライであります。
お品書き上、その「キングサーモン定食」の右隣に書かれているのが、「ハンバーグかつ定食」。
なぜにメンチカツと云わないのかは聞きそびれたけど、「メンチカツですけど大丈夫です?」と確認されたところをみると、「ハンバーグ」と思い込んで注文して届いてビックリの客もいるのだろうね(笑)。
まさにパッと見メンチカツな「ハンバーグかつ」。
ただ、例えば西麻布の有名処「三河屋」のそれのような云わば主張の強いメンチとは違って、身肉と脂の甘さを衣の軽妙さで包んで愉しむ仕立て。
メンチカツと呼ばない理由はそのあたりにあるのかもしれません。
時にはちょっと奮発して「上ろーすかつ定食」とするのも一手だけど、
店内で聞くオーダーの声は圧倒的に「ろーす」、そして「ひれ」であります。
店先の植木に埋もれそうな、町のとんかつ屋さん「美濃屋」。
やっぱり店主が美濃の国ご出身ということなのでしょうか。
口関連記事:
西麻布名物「三河屋」で 昼定食メンチとオバチャンとコロッケと(07年09月)
「美濃屋」 中央区新川1-6-8 03-3551-9080
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