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所在は東村山市。
駅で云えば久米川が最寄り駅。
住宅地と呼ぶべき静かな裏通りに何気なくある鰻のお店、「はや幸」に寄ってみました。
店左手の生け簀らしき囲いには、なにかの呪文のように、「うなぎすっぽんどじょうこい」と書いてある。
鰻のみならず、川魚を供してくれるお店のようです。
色の褪せ始めた暖簾を払うといきなり、電話くれた方?とオバチャン。
手前のテーブルも奥の座敷も満席の様子で、あれあれ電話しとかないと駄目だったのかしらんと思いながら「いえ、電話してませんが…」と指一本でひとり客を指し示す。
「あら、はい、じゃぁ」と見回して、「ここへどうぞ」と今までご自分が座っていたカウンターの椅子を空けてくれる。通路にへばりつくようにするカウンター唯一の席だけど、特等席かもしれません。
ええっとと頭上の品札を見上げて、「うな重特上」の「竹」をお願いします。
あ、あと、「うなぎ肝焼」もねと云うとオバチャンは、「並」と「上」とあってね、「上」は肝のみで「並」は肝と背ビレ部分を半々なんだけどどっちがいい?と丁寧に説明してくれる。
背鰭ってのも面白そうと、「並」とします。
ほほうとその串を眺めながら口に運べば、背ビレ部分を巻いたものだというのにソコにふっくらした脂があり、いい具合に肝のほの苦さと解け合って、なかなか旨い。
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ってか、これぞ佳肴だよなあと、
頭上の「正一合」とか「コッ酒」といった文字を恨めしく再び見上げたりして(笑)。
「自家製まむし酒」なんてあるけど、焼き台の前に立つオヤジさんの血色が妙にいいのは、このあたりに由来しているのかな。
「どじょう汁」もとお願いすると、「きも吸い」ついてるんだから「特製どじょう味噌煮」がいいんじゃない?とまたまたありがたいご指南をいただいて、素直に従う。
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味噌煮といっても、とろみのある系ではなく味噌仕立ての汁系。
泥鰌は、築地経由の鳥取のものだという。
煮崩れることはないのに、噛めば骨まで柔らかく解けていくのが、嬉し楽し大好き(笑)。またまたお酒が欲しくなるンだな。
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目の前では、オヤジさんが蒲焼きの裏側を覗くように確認しては、ひっくり返して壺のタレに浸す。
そして、お重が届きました。
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野生的かつふっくらした表情の鰻に手を合わせて、端から挑む。
意外なほどふんわりと溶けていく様子に脂の嫌味や臭みはない。
うへへ、と一気喰い(笑)。
なにより、にこやかに話すオヤジさんとオバチャンが創るアットホームな雰囲気がいい。
時代も変わって、今や仕入れ先へは留守電で注文出すので、顔見るどころか会話さえしないことも多いんよ、時代も変わったねー、一長一短あるけどねー、なんて話を屈託なくしてくれる。
帰りがけの子供が手を振りながら「またくるね~、また明日ぁ」とはしゃぐように叫んだのを聞いて、お店全体がさらににこやかになった。勿論、オヤジさんもオバチャンもニッコニコ。
そんなご夫婦のキャラも魅力な「はや幸」は創業昭和46年。
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今度は、商標登録&実用新案特許取得の「べんけい焼」目指して呑みに行きたいな。時価、とある「すっぽん」もいっとく?
「はや幸」 東村山市栄町2-30-38 042-394-0805
http://inshokuten.org/hayakou/
column/02575