案内されたテーブルは、さっきのタワーを再度見上げる窓際の席。 「タワシタ」の特等席ということになるね。
この借景をダイナミックなものにするために、窓面はオープンにしている。 事務所仕様のフロアをレストランに仕立てた隠れ家も、それゆえ閉ざされ感も怪しさもないスペースになっているんだ。
シャンパンで口開き。 がっしりとした木の装丁に水彩画で表現されたメニューも「タワシタ」のエッセンス。 ところが、メニューの変更に水彩画のページの準備が追い付いていないところがある。 描き手に依存するところがあるので、そういうこともあるかもね。
おまかせもできるそうだけど、特にコースの設定はなく、プリフィクスなスタイル。 まず前菜として「馬を味わいつくすカルパッチョ」。 コラーゲンの塊りのようなタテガミやロースなどの部位が、 茗荷や浅葱と一緒に鏤められている。 塗したタレがいい。
ピノ・ノワールの「Marsannay Rouge 1999 Louis Jadot」をグラスに、 「ホルモンのトマト炒め」「色々野菜のラタトゥイユグラタン」を。 火を入れ過ぎないトリッパの食感がトマトソースに馴染んで、悪くない。
メインになったのが「豚すね肉の半日煮込み、ラビゴットソース」。 蕩けてグズグズになる寸前のすね肉の、圧倒するようなボリューム感をバルサミコ系統の酸味の利いたソースが随分と軽くしている。 部分的に塗られていたマスタードは余計かもね…。
ふう。早くも満腹になってしまった。 それでも好物のマンゴーのシャーベットをあしらったデザートは食べれてしまうというのは、これが所謂”別腹”か?(笑)。
ふと振り返ればワイワイガヤガヤとした満席の店内。 しかも90%UPの女性率に気がついて急に肩身が狭くなったりする。 小山薫堂氏や企画の関係者、そして芸能人が隠れ家利用で一巡する過程は過ぎて、 なんだかもうメジャー女性誌各誌に載ってしまったかのような情況にも映る。 ううむ。 帰り際、マネージャーらしき人物(「AZABUハウス」出身だという佐藤氏?)が、 「いつもはこんなじゃないのですが、すいません」と詫びてくれた。 客筋を選べない。 そんな飲食店の宿命の端緒が早くも訪れているのかもしれません。
「タワシタ」 港区東麻布1-9-3 2F [Map]
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