column/02065
すし「吉武」
星条旗通りへと斜めに抜ける筋からさらに左に折れ入る。その、六本木の真ん中にありながら住宅地の袋小路のような脇道に行灯を点しているのが、すし「吉武」です。どこかの邸宅に招かれたかのような雰囲気に包まれる地下へのアプローチ。テーブル席の脇を抜けて、奥に構えるカウンターへ。白木そのままの形状を活かした一枚板の天板だ。角皿に用意してくれるお造りでビール少々。初めて耳にした「スマガツオ」は、築地とは違うルートで届けられたものだという。脂のノリが上品だ。海ぶどうや雲丹の豆鉢以降は、麦のロックで。ふんわりした「クロムツ」の焼きモノ、ギュッと旨味の凝縮した「牡蠣のオイル漬け」、出汁味迸る「タラバガニのせ茶碗蒸し」で、グラスが進んでしまうのね。そしてにぎり。爽やかなサシのトロを口開きに、昆布〆の鯛、二丁使いにも見える包丁の小肌、蕩ける鯵、塩と柚子で甘さ引き出す烏賊、ふっくらがうんまい煮穴子、などなどをいただく。碑文谷の御仁の云う通り、どちらかというと甘めのシャリ。好みの分かれるところではあるけれど、甘めシャリの印象としてリテラシーを補う一軒になってくれそうだ。
「吉武」 港区六本木7-12-20ライジングビル地下1階 03-5785-2341