column/01863
天ぷら「楓雅」
それは先日のこと。京橋方面からの通りすがり。その以前タイレストランがあったテナントが天ぷらのお店になっているのが目に留まりました。上品で気取りのない調度が外からも窺えます。いっちょ入ったろ~とドアに進みながら、どれどれと店頭にあった昼メニューを見てやおら立ち止まってしまいました。オヤスクナイ…。躊躇する気持ちに挫かれて一旦回避。この日改めて足を運んだ次第、なのです。
改めて店周りを見ると、最低価格の「かき揚げ天丼」と同価格で「穴子天丼」が表示されていました。白人6人組のいた手前のエリアは洋装とも云えるテーブル席。案内された奥左手のカウンター席は落ち着いた天麩羅店らしき装いになります。銅製ドームが覆う天麩羅鍋を正面にする位置に収まって、「穴子天丼」をお願いしました。木箱にタネを整然と揃えてから衣を溶き、といった所作が手に取るように窺えます。木箱のエビは、そのまま刺身でもいただけそうだ。カウンター下の冷蔵庫から取り出された穴子は一匹の半身が2枚。そのままのサイズで揚げられ、どんぶり上に横たわってやってきました。少し鼻先を近づけると気の利いた美味しい香りがぶわんとしてくる。衣の香ばしさとはまた違う芳しさなんだ。ひとまず一片の穴子天に齧りついてはご飯、そして穴子天を繰り返す。もうちょっとカリッとさせてぎりぎりまで脱水させた感じの穴子の方が好みかなぁ。手前には獅子唐、そしてもうひと品小玉葱のような天ぷらがある。ん、なんだろ、と訊ねると「ひめにんにくという大蒜です、それ以上大きくならない可哀想なヤツなんです」と大将。ははぁ~ん、あの芳香を醸していた真犯人はコイツだ。ちょっとズルイ感じがしないでもないけど、なかなか魅惑的なアクセントになってるね。天ぷら「楓雅」は、かの「稲ぎく」の三代目が興したお店だそうで、なるほど社用も充分に意識したお店の構成で、気軽な町場の天麩羅屋の風情ではない。夜のおまかせともなれば、15,000円也。一方、使用する鍋を専用にし、タネは野菜のみで鰹ブシ、卵も一切使わないという完全ベジタリアンコースなんてのもある。ここへきて始めたという「花天丼」1,500円は、ヘルシーなすし飯の上に色とりどりの具と天ぷらをコンビネーションさせたものだそう。女性向け天ぷら屋のちらし、という感じかな。伝統に加え、健康と新しさもモチーフにしているようです。
あれ?そうすると近くの「小野」の主人とはどういう間柄になるのでしょうか。
「楓雅」 中央区八丁堀3-14-2 東八重洲シティービル1F 03-3523-8520