道なりに、粋なインド料理店の角を曲がると、古びた長屋の続く路地に出た。振り返れば、長屋の情緒とその先の高層な建物とのコントラストに立ち止まる。 成子坂の北側エリアから西新宿のビル群を眺めた時に似た、一瞬のデジャヴ。
いい雰囲気だよねと佇んで眺めたお店には、暖簾の掛かった入口が二つ。 割烹と書かれているその下で、「東京流 うなぎ」の文字もある。 これは、寄り道しない訳には参りません。
ちょっと呑んでしまいます御免なさいの昼下がり(笑)。 ラストオーダー間際だと聞いて、一品だけでも麦酒のお供をと「うまき」をひとつ所望します。あらかじめふた皿に取り分けてくれる気遣いに感謝しつつ、 玉子から立ち昇る湯気に心和みます。 熱々をハフホフといただけば、柔らかで明快な出汁の旨みに鰻のそれが重なって、 うん、美味しい。
壁に貼られたお品書きをちょっとチャーミングで愉しく思うのは、 「シングル」「ダブル」「セミダブル」という文字が並んでいるところ。 ベッドのお話ではなく、勿論、鰻のボリュームについての事柄です。
ちょうど、ゆっくりと麦酒の瓶が空いた頃、 「うなぎ丼」の丼重が届きました。3川並んでいるのは、”セミダブル”をお願いした証です。
外光を少々照らして艶やかに誘う、うなぎ。でも、ぼってりしたタレの感じではなく、端正な印象を覚えます。
口に含めば、軽やかな香ばしさと品のいい脂と旨み。 はい、美味しゅうございます。柔らかなその身の感触に鰻を蒸す工程を想うところ。 そして特筆すべきは、後味にふっと残る酸味。 これはもしや、タレに梅酢のようなものを仕込んでいるのではないかしらん。 そのお陰で、一種のキレのようなものが生まれ、軽快かつ個性的な食べ口になっています。 これって、割と常道なことなのでしょうか。
大阪・福島は、ホテル阪神の裏手地蔵寺路地裏の長屋に、 大正10年創業の鰻の老舗「菱東(ひしとう)」が佇む。訊けば、建物そのものはもう百年を越えるものだそう。 どうやら、初代が、東京流の流れを汲む「菱富」という店で修行し、 「菱富」の”菱”と東京流の”東”を取って「菱東」と命名した、らしい。 しばしその佇まいを眺めてから路地裏を離れようとしたころで、 一服されている二代目のご主人らしきご老人とお話しする機会に恵まれた。 東京流と看板に示している通り、背開きで蒸しを入れる蒲焼きなのだそう。 あ、しまった、梅酢っぽい味わいの秘密についても訊ねればよかったな。
「菱東」 大阪市福島区福島5-7-9 [Map] 06-6451-5094
column/03318
大阪にも東京流のうなぎがあるのですね~。
背後のマンションと、下町風の風情が非常に良いコントラスト。
ダブルだとうなぎが2層になるのでしょうか?
この場所、どうやって見つけたのですか?
来週は某洋酒メーカーの皆様が、かなりマニアックな居酒屋に大阪で連れて行ってくださるとの事、きっとこういった場所なのかなと、この記事を読んで想像してしまいました。
Re:seppさま
はい~、大阪にも関東炊きがあるように~(かな)。
路地好きゆえ、まさに偶然、その前を通って見つけました。
なるほど、ダブルは中入りになってるかもしれませんねー。
おお、大阪のマニアックな居酒屋!いいなぁー、どこだろう。