古びた硝子戸を開くと、右手に薄い硝子の仕切りで囲んだ厨房が見える。 右手手前と左手に小さなテーブルが幾つか。 一瞬ドラマのセットに紛れ込んでしまったかのような、 そんな錯覚を憶えるほどのレトロ感もこの店の魅力。おひとり様は、厨房を囲むL型のカウンターの止まり木のいずれかに収まります。
お目当ては、「グリルエフ」の牡蠣メニュー。 いつぞやもいただいて、やっぱり一番気になる「かきソテー」から所望することといたします。
覗く厨房には、ふたりの料理人。 使い込んだコックコートが身体によく馴染んでいます。
楕円のお皿一面の茶褐色のソースに載った牡蠣たち。引っ掛けるようにフォークを刺して、やおらはむッと齧り付く。 酸味を利かせたソースが具合いい。 食べてしまうと、クリーム使いでも、たっぷりバター使いでもなく、 つまりはこふいふことになるのかなぁ的な気がしてきます。
素朴なところだけど、足らずでもなく過ぎずもしない火入れの加減が、 牡蠣のソテーでも大事なのだなぁと独り言ちです。
日を改めて、五反田駅前L字路地。 この晩は、テーブルもカウンターもご盛況。 空いていたカウンターの一席に座ると両隣は、カツレツ系のお皿に向き合っているところ。
「かきチャウダー」で食事って思ったらどうしたらいいかなぁ?とホールの女性に訊いてみる。 ライスかパンをつけることになりますが…、ハーフもできますよ。 チャウダーライスってもなんだよなぁと思っていたので、ハーフができると聞けたのも収穫と思案して、「かきフライ」と「かきチャウダー」のハーフをお願いすることにいたします。
クラッカーを浮かべた「かきチャウダー」。スプーンひと口、ああ、旨い。 きっとずーっとこふいふレシピで提供し続けてきたのだろうなぁなんて思わせる実直なスープ。 玉葱の甘さに蜆のエキスも含んでる気配のする。
「グリルエフ」の「かきフライ」は6個のせ。細かめのパン粉に包んだそれは、牡蠣の身の柔らかさがそのまま伝わるような揚げ口の。 檸檬をさっと搾っただけで十分な感じ。
歯の先を受けて解き放つ牡蠣の旨味はそこそこに濃いぃ印象。訊けばなんと、三陸に残った、岩手の牡蠣なんだそう。 この冬貴重な牡蠣に此処で出逢えるとは正直、思っていませんでした。 やるなぁ、きっとずっと其処の牡蠣を使ってきたのでしょうね。
五反田駅前にして、路地の老舗洋食レストラン「グリルエフ」。 蔦の絡まる煉瓦造りの外壁もエントランス廻りの造作もレトロな味わいに十分なもの。 フランス料理店として創業したのが、今を60余年遡る昭和25年のこと。 「グリルエフ」の”エフ”って先代のお名前の頭文字かなにかだろうかと訊ねたら、然にあらず。 亡くなった先代が三重・伊勢の、夫婦岩でも有名な二見浦のご出身で、 その”二見浦”の頭文字をとって「グリルエフ」としたのだそう。 ね、結構意外でしょ(笑)。
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「グリルエフ」 品川区東五反田1-13-9 [Map] 03-3441-2902 http://grillf.rgr.jp/
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