たった10席のL字カウンターが囲う厨房が「今井」主の桧舞台。 お願いしていた通り、カウンター角の4席を確保してくれていました。 くち開きの一杯にと、ダークエールの「飛騨高山麦酒」。 深い焙煎を思わせるものではない、さらっとメローな呑み口だ。 「今井」では、3,000円のコースがベースとなっていて、 そこへ単品を加えていくのがスタイル(6月訪問時)。 まずは、「前菜の盛り合せ」から。小振りな湯飲みを器としたのが、生茄子に小夏を添えたもの。 湯葉、食用鬼灯(ほおずき)、生玉蜀黍、茎ブロッコリー。 奈良漬にマスカルポーネチーズを合わせた、醗酵モノ×醗酵モノの名コンビ。 これはなぁにと尋ねたは、大根の種の醤油漬け。 目の前の焼き台では、じりじりと串が焼かれて、いい調子。 繊細な凝縮感がありつつ柔らかな「レバー」にクリーミーにも思う「つくね」の串。 サラダには、ベビーリーフや地中海のハーブ、ディルなんぞをこんもりと。 曰く、「龍園」でも使っているのじゃないかな(?)という、栃木の長ピーマン。焼いたことで活性した甘さとほの苦味がゲランドの塩で旨みに昇華する。 いいね。 とにかく辛い白、というリクエストにお応えしてくれたのが、「BOURGOGNE ALIGOTE 2007」。 酸味強いですよーと聞きながら口に含むとこれが、へー!と笑っちゃうぐらいに酸っぱい(笑)。 ミネラルなドライ感と併せて、酸味がきゅっとくる。 なはは、面白いね。 仄かな柚子の風味で焼いた「幽庵焼」。おろし立ての山葵と岩塩のちょんづけでいただけば、 はっとしてふわんとする旨みにしみじみいたします(笑)。 ころんと丸いおでん種のようなのは、さつま揚げじゃなくて、 本日の野菜のひとつシャンピニオン。じゅわんと滲む汁に意外なほどの旨みたっぷし。 みんな思わずの、破顔一笑だ。 お好みで選んだ「ボンペタ」は、 “”ぼんじり”や”ぺた”に知る尾羽のつけ根あたりの部位。かりりとした皮目とジューシーな脂の直球を軽快な串に仕立ててくれています。 黒板メニューからの「軍鶏の昆布〆」は、胸肉の。軍鶏の澄んだ滋味を昆布の旨みがそっと下支えして、いい。 下敷きにしているのは、しゃくっとした食感が愉しい”はすいも”だ。 じゅわわわと脂を滴らせつつやってきたのが、 メインディッシュともいえそうな「もも焼」。ぱりりとした皮と一緒に噛み締める香り高き旨さに、暫し、唸る(笑)。 「レバーのパテ」にはコリアンダーのパウダー。レバーのパテはね、とっても好物なのだけど、 こうしてすっと濁りないパテにはただただうんうん頷くばかりだね。 これも黒板メニューからの「焼チーズ」は、イタリア発スカモルツァの串焼き。零れ落ちそうなところをおっとっとと口に運べば、 なはは、キレのよいチーズのコク味が堪らんであります。 品書きにあるお酒は、「竹鶴」が軸に「神亀」あたり。 「竹鶴」純米から、大和雄町純米原酒「小笹屋 竹鶴」へ。 芯のしっかりした呑み口を思います。 これって絶対ズルいよなぁと見詰めつつ、 ふと「アイバンラーメン」の「ローストトマト飯」を思い出させてくれたのが、 黒板メニュー「ロッソトマト」。焼いて甘いトマトの滴りというのは、やっぱり、素直にズルい! 胸肉のえんがわ、と解説のある「ひも」を挟んで、 干しいちじくをゴルゴンゾーラのムースと合わせてバゲットで。これもズルいと云えましょう(笑)。 そうそう、これも、といえば、 これも「竹鶴」にもワインにもどちらにも合いそうな「笹身の風干し」。奥から奥から旨みが滲み溢れる、乙な酒肴であります。 宿根産雄町の「小笹屋 竹鶴」を舐めつつ思うのは、 お持ち帰りできないかしらん、なんて。 黒板メニューを含めて、全メニュー食べ尽くすつもりかい!と互いにツッコミつつも〆のお食事をということで、「親子丼」に「鶏ネギにゅうめん」。 デザートもいっちゃおうよと「キャラメルアイスクリーム 古酒がけ」で、つまりは大団円。 ああ満腹満足とお腹をさすりながら、改めての破顔一笑を交わします。
千駄木の路地にひっそりとある佳店、焼鳥「今井」。素材に対するちょっとしたこだわりと、その素材自身の魅力を真っ直ぐぐいと引き出すことに腐心していることが、佳肴のひとつひとつが描く旨みから伝わってくる。 それを肩の力の抜けた風情で供してくるれるのが、また粋なのだね。 口関連記事: 自家製麺「アイバンラーメン」で塩半熟玉子のり豚ローストトマト飯(08年11月)
「今井」 文京区千駄木2-29-4 シティーハイツ千駄木102号[Map] 03-6904-7516
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