池上本門寺を詣でるたびに、そして辺りを徘徊するたびに気になって仕方のない店がありました。
「燕楽」を右手横目に駅前から斜めに参道を入っていった右側のお店。
木立に隠れた壁には、4つの円形が掲げられていて、そのうちのひとつを覗き込むようにする。
ウイスキー樽の底と思しきその円形には、懐かしい人には懐かしい「トリス」のキャラクターが手書き風の筆致で描かれています。
キャラクターに添えて、「PIZZA」の文字。
すっかりペンキの剥がれた風情が堪らない。
そして、残りの3つの樽の底にある赤い文字を繋げると、「自由雲」。
「SUNTRY COCKTAIL BAR」との表記とともに、赤い切り文字を浮かべる、凝った造りの味わい深い看板なのだ。そして、夜の池上本門寺通り。 硝子ブロックの横の古びた扉。 とうとうその扉に手を掛けて、開けるよ!の相槌とともに引き開けました。 店内は小ぢんまりとして、コの字のカウンターが迎えてくれます。
そのコの字の真ん中に佇んでいるのが、マスターである平野さん。
かなりの先輩であることは間違いないけれど、まだまだ艶を失っていない、そんな表情が印象的です。
むほほ。
玉葱の甘さがいいでしょいいでしょ、と味蕾を擽って、いい(笑)。
三種類のスパイスを使っているんだよとマスター。
とろんとしたチーズは、マルボチーズというデンマーク産のものらしい。
なんだか真っ直ぐ優しい美味しさのするピザなんだ。
小麦粉たっぷりのベシャメルとは違う、さらりとした中に塩梅のいいコクがあるソースにジャガイモのほこほこがしっとりと馴染んで、なんだか気持ちがほっこり安らぐような美味しさのするグラタンなんだ。
マスターが調理のための缶あれこれを置いている棚の脇の壁にはこうある。
「1956年壽屋チェーントリスバーとして発足、サントリー城南地区チェーンバー今日になりました、元気にガンバリますご愛顧ください」。
もう創業から半世紀以上のお店なんだね。
問わず語りのマスターのお話に耳を傾けると、
青山に生まれ育ったというマスター平野重太郎さんは、21歳にして戦地満州へと赴き、内地に戻ってから浜口庫之助のジャズバンドでベースを弾いていたんだそう。
往時の味あるモノクロ写真が入口近くの額で拝見できます。
大阪ミナミの「銀馬車」で演奏したことや力道山とのエピソードも。
メニューにある「アフロ風」というのはきっと、バンド「浜口庫之助とアフロクバーノ」に由来しているんだね。
こないだねぇ、とマスター。
創業来半世紀の味あるサントリーラウンジ「自由雲(じゅん)」。
表のメニューにあるように、「じゆううん」ではくて「じゅん」と読む。
優しい懐かしさに包まれたい気分の宵口に寄るのがオススメです。
御歳80歳代のマスターに会いに、ね。
伺い損ねた、店名「自由雲」由来も訊いてみたいんだ。「自由雲」 大田区池上4-31-20[Map] 03-3751-9292
column/02994


7/1に放送していましたよ~。
行ってみたいなぁ。
Re:おぐさま
コメントありがとーございます。昨晩録画で観ましたよー。
色紙にサインをねだるマスターが可愛かったです(笑)。
ぜひぜひお越しくださいませ♪