暖簾越しに中を覗いては、オヤジたちの頭がぎっしりとカウンターを埋めている様子に、「やっぱり満席か~」と落胆すること幾度か。
魚の店「均一軒」。
席は、早いもん順。
予約は受けないし、同席者が先乗りしていても席の確保はできないという。
残り一席!の情報に、気を急くような早足で新橋の路地へと向かいます。
再び暖簾越しに店内を覗く。
と、丸椅子の座面が視線に捉えられました。あぁ、空いててよかった(笑)。
麦酒を小瓶でいただいて、乾杯。
突き出しは、和布蕪。
まさに大将を囲うように配置したカウンター。その中央の真名板が「均一軒」の舞台だ。
奥の壁にした黒板から選ぶ「あじたたき」。
取り出した鰺の皮を矧ぎ、テンポのいい包丁運びでおろし刻み、二本差しの包丁の背でトトントンと叩く。途中で、八丁味噌らしき固まりや葱を加え、缶を振り、水っ気を添えてさらに叩く。
全体に艶がでてきたところで、包丁で整形する。
これがね、あれ?なんで?って不思議に思うほど、旨い。
活きの良さを思わせながら、空気を含んだふんわりとした甘さにさえ及ぶ食べ口。
むほほ~。
こいつはイカンと、冷酒「賀茂鶴」。
辛さが大人な谷中や「ぎんだらてりやき」にグラスが進んじゃう。
カウンターの幕板に膝頭をぶっつけながら、口からグラスを迎えにいくポーズに、我ながらオヤジだなぁと思ったり(笑)。
「たき川とーふ」は、固めのお豆腐をすすっと心太器で押し出した、いわば変わり奴。
「ばい貝酒むし」「きぬかつぎ」、刻んだ「茗荷」。
ひたひたと沁み入るようなお酒になってくるのです。
「昼間、駕篭、出てますよね」と云うと、にやりとする大将。
そう、日中お店の前を通りかかると、河岸から魚を運ぶ役目を終えたらしき姫竹の市場かごが、干すように、そして、今日も仕入れしてきたことを示すかのように路地に面して掛けられているのが見つかるのです。
新橋の路地の臨場感、「均一軒」13席。
また、空席がありますようにとこの暖簾の隙間を覗いてしまいそう。
八時くらいが狙い目のようです。
「均一軒」 港区新橋2-8-2 03-3591-2928
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