青々とした木々に包まれた通りを進み、フレンチ「エルミタージュ ドゥ タムラ」を右に見て奥へと車を進めると、正面に店の名を記すサインが見つかります。
さらに右手の駐車スペースには既に何台もの車が場所を占めていました。
苔生した敷石の上をアプローチに、硝子越しの店内へと導かれます。
案内されたテーブルに向うと、薪釜からの熱気が一瞬身体を囲んで消えていく。その薪窯脇のテーブルへ。
振り返ると木立に囲まれた庭先に木漏れ日が明るく降り注いで、初夏の軽井沢らしい風景です。
「高原野菜と自家製生ハムのスープ」「空豆と豆腐の冷製ポタージュスープ」をそれぞれに選んで、ピザのチョイス。
一枚に2種類を組み合わせることができると聞いて、
王道「マルゲリータ」に4種類のチーズ「クアットゥロ フォルマッジ」の一枚、そしてパルマ産生ハムの載った「プロシュート」に季節限定の「アスパラ」の組み合わせをお願いします。
窯で焼く様子を見ていると、その時間が短いことに驚く。
窯の前を離れることなく、刻一刻と変化するピザの表情を見逃すまいかとするように凝視して、一瞬のタイミングを掬うように火の口から引き出すのです。
まずは「マルゲリータ」の半円から。
口にした途端にトマトの豊かな清冽さと甘さが同時に襲う。生地の食感と塩気もいい。
のっけから一撃やられた感じだ。3口で1ピースを平らげてしまいます。
続いて「クアットゥロ フォルマッジ」。
コクのあるもの、クセのあるもの、ベースを支えるもの、ニオイに主張するものが素敵に融和して生地の上をたゆたう。おお、旨い。
方や、「アスパラ」の清々しい青みの間からアンチョビの独特な塩味がアクセントを添えてくる。
ああ、旨い。
いやはや、想定外の満足だ。
趣味の生ハム作りにハマっていた建築家と元新聞記者それぞろのご夫婦で別荘を改装して始めたという。
店名の「エンボカ」は、スペイン語の”de boca en boca(口から口へ)”を由来としているそう。
趣味の延長線上がここまで素敵な昇華を果たすとなんて、心憎い限りです。
「enboca」 長野県軽井沢町南原3874-5 0267-44-3301
http://www.enboca.jp/
column/01558