味処「きく蔵」で大雪渓と特上馬刺しおやき的名物筍饅頭つらら麺松本の宵の口

kikuzo路上に雪が積もり残って凍り付いていても、こっちの人達は平気な顔で自転車を乗り走る。
一面に雪が凍り付いた札幌の舗道上でピンヒールのおねえちゃん達が闊歩していた光景よりは驚かないものの、ちょこちょこコケたりしないのかな、なんて思う松本市街の一日。
時刻が夕方に差し掛かってくるとやっぱり、地べたの底の方から冷気が上がってくるような気がする。
完全防備で訪れていたので、身体や足許は寒くないものの、風に晒した頬っぺたは流石に冷たい。
晴れていてよかったと、冬空の松本での仕事を終えました。

市街地を流れる田川という河沿いを往き、
蕎麦店はおひる時のみの営業の店が多いのだなぁと、
そんなことを思い乍ら例によって路地へ路地へと迷い込む。

ナワテ横丁と示す小さなアーチを掛けた、
妖しげで断然惹かれる路地にも、
灯りを点している店は余り多くない。
一度お邪魔したことのあるビストロ「橋倉」の店先の空気を確かめて、
路地の角にある居酒屋をちらっと覗き込んだりする。kikuzo01その先へと抜けて、大正ロマンの街なんて、
そんなフレーズを掲げた上土通り辺りを徘徊します。

枯れた風情がいい味わいの「本郷食堂」の店先を掠めて、
まだまだ雪の残る裏道を往くと、
右手に料理屋の灯りが見えてくる。kikuzo02「きく蔵」とひらがなに崩した名の看板の横には、
「菊蔵」と篆書体風の書体で藍の暖簾に白抜いてある。
店先の黒板には、本日のお勧め品が並んでいます。

開店早々、混み合う前のカウンター。kikuzo03おばんざいよろしく、
大皿の幾つかがカウンターの上に載せられています。

店先の黒板で認めていた「特上馬刺し」。kikuzo04滋味深そうな見栄えも、
届いたばかりはまだ凍っていて、
つまりはほぼルイベ状態。
暫く放っておいてから愉しみましょう。

御髪もびしっと決まった姐さんに、
「筍まんじゅう」とはと訊ねると、
当店の名物のひとつで、
刻んだ竹の子のあんを包んで揚げた、
自家製の饅頭だという。kikuzo05火傷しないようにしてくださいねと受け取った、
笊の真ん中に鎮座した「筍まんじゅう」。
そこには「きく蔵」と刻印が焼かれている。

どれどれと半切した饅頭の中には成る程、
湯気を上げる竹の子のあん。kikuzo06そぼろな肉や椎茸、
そして竹の子が濃い目の味付けで包まれている。
うんうん、酒のあてにもなるイケる口の饅頭、
いや、饅頭というより謂わば”揚げおやき”でありますね。

冷えた頬っぺたを温めようと、
信州安曇野の山の酒と謳う「大雪渓」の燗酒を舐めていたら、
お品書きの「白子天ぷら」が気になった。
kikuzo07信濃の国で呑る信濃の国のお酒に海のものもよく似合う。
期待通りの生き生きとした白子のクリーミーが、
揚げ立ての衣の中から弾け出ます。

ふと卓上の鉢の中に置かれたムック本の背表紙が目に留まる。kikuzo08その内のひとつは、太田和彦先生の一冊。
先達にはいつもお世話になっております(笑)。

カウンターの向こうで大将が、
いそいそと拵えているものがある。
チーズ状のものを臙脂色のあんで巻いているのだ。kikuzo09それって何です、いただけます?と訊くと、
何か特別な膳に添えるもののようだったけれど、
お裾分けをいただけました。
マスカルポーネと松の実を杏子飴のような生地で巻いて、
それを切り分けると妙にそそる断面。
こふいふのもオツ、というのでしょうね。

お代わりしちゃったお銚子のお相手に、
もう一品とお願いしたのが「新じゃが照煮」。kikuzo10コロコロっと丸くて小さめの新ジャガが、
皮付きのまま、味醂控えめの割とキリっとした煮汁に絡んで。
ホクホクがホイホイと食べれてしまいます(笑)。

新宿へ向かうかいじ号に乗る前に、
〆てしまおうと品書きのお食事欄を眺めると、
「つらら麺」なんて聞き覚えのないフレーズが目に留まる。kikuzo11訊けば、松本から北上した大町温泉郷で、
つららの出来るような寒いところで作っている、
塩を使わず納豆菌で打った麺なのだという。
成る程、このツルルンとした滑らかさはもしかして、
納豆菌の仕業なのかしれません

市街から松本城側に田川を渡る、上土通りとかつて呼ばれた裏道に、
割烹にして季節料理の味処「きく蔵」がある。kikuzo12店内に掲示された「フグ営業届出済証」には、
ご主人のお名前が示されていて、
そこには”菊”の文字がある。
今度もしも機会があるなら、
奥の個室で「ぼたん鍋」なんぞをいただきとう御座います。

「きく蔵」
松本市大手4-7-10 [Map] 0263-36-3728
http://www.matsumoto-kikuzou.com/

column/03663

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