年間の1/3が雨降りだという、高所の街ザルツブルク。でも、どふいふ訳か割と晴れていたり薄曇りだったりしている印象が強いのだけど、そう云うとそんなことはないよと怒られたりする(笑)。
今回訪れた際には晴れていたウィーンからウェストバーンでザルツブルクに近づくに連れて雨が降り出しました。
転じてザルツブルクからお出掛けのこの日も駅までの道中は雨。
向かう先は晴れているといいよねと列車に乗り込みました。
ザルツブルクからウィーンへ向かう線路は、一旦北に進んでからリンツ方面へと西走する感じ。
対して、アドリア海方面に向かう列車は、そのイメージ通りに南へ南へと南下する。
すると、山を越える度に空が明るくなってきて、なんとも清々しい景色が広がってきた。
草原の間を清らかな白波をたてた河が流れて、その先にはまだ雪をいただいた岩山が聳えてる。
途中駅では、車を運ぶ専用貨物車両が出番を待っていたりする。
クルマを載せて走っている様子を見たかったであります。
山の稜線高い位置を走る場所に出ると、遥か下方に小さなお城が顔を出したりする。
ちょっとした観光登山鉄道に乗っているような気さえしてきます。
トンネルを潜り、斜めに折り返して国境を越え、到着したのがウディネUdineの駅。
初めてやってきたイタリアが、ローマでもミラノでもナポリでもなく、西の外れの街だというのが、なんかいい。
街を歩けば、石畳の上に”チンクェチェント”の愛称で呼ばれるフィアット500がいたりする。
そう、皆さんご存じ、あのルパン三世の愛車として愛らしいフォルムに描かれているクルマ。
「カリオストロの城」に登場したチンクェチェントも確か、こんなクリームイエローでなかったでしょうか。
駅正面のローマ通りから街の中心地らしき方向へと散策して、リベルタ広場Piazza della Libertàに出た。
リオネッロのロッジアLoggia del Lionelloの開廊から向かい側のジョヴァンニのロッジアloggia di san giovanniの時計塔に臨む。
ちょうどその時間で、塔の上の裸の紳士が愛らしい挙動で鐘を打ってくれました。
少し移動して、ジャコモ・マッテオッティ広場Piazza Giacomo Matteottiにやってくると、四角い広場の周囲にはカフェが並んでる。
でも、お目当てのお店は、この広場に面しているところではないみたい。
広場か伸びる道からドレス並ぶショーケースを目印に路地に忍び込む。
石畳の路地に幾つか椅子が出してある。
壁から掲げたフラッグには「frasca di città」とある。
いいね!
如何にも地元のみんなに愛されていそうなお店の匂いがしています。
折角なのでと石畳の上のスチールのテーブルを確保してグラスのワイン。
うん、美味しい。
グラスの向うに様子の窺えるオジイさんの、ベレー坊の似合いっぷりがなんだか素敵。
グラスを手にし乍ら見上げる路地から覗く空。
今ココにいるのがちょっと不思議で、心地いい(笑)。
いただきますと両掌を合わせてたのは、ウディネ近郊の郷土料理だというフリコ。
カリッとした表層の中はもっちりした食感で、中からジャガイモなぞの具材が顔を出す。
焼けたチーズの風味が堪らない。
うんうんと頷いてまた傾けるグラスが、もう空いてしまいそうです。
プロシュットのサンドイッチ、パニーノもまた旨い。
温めたパンの按配やよろしく、一緒に挟んだホースラディッシュがいいアクセントになっているんだ。
ウディネUdineの街のジャコモ・マッテオッティ広場近くの路地に「frasca di città」はある。
店名「frasca di città」は、”街の枝”という意味でよいのかな。
それとも”街の分岐点”かな。
フラスカfrascaというのはフリウリ語で”農家が夕食を訪問者に振舞う食堂”のことを呼ぶようで、「frasca di città」はさしずめ”街の農家食堂”といったところでしょうか。
路地に掲げたフラッグを改めてよくみると、木の枝の図柄が描いてあるのが判ります。
フラスカfrascaへの道標には枝を掲げる習慣があるようで、それを図示したものなのかもしれません。
素敵な秘密基地への案内をありがとう。
「frasca di città」
Corte San Giacomo 33100 Udine Friuli Venezia Giulia, Italy[Map]
