ただ、ちょっと目線を駅前周辺から外すと、意外な高級住宅地を背後に抱えていることに気付きます。
以前何度か一宿の恩をあずかったことのある元同僚のマンションは桜田通り西側にあって、その先には池田山と呼ばれる住宅地の丘になっている。
皇后美智子さんの実家である正田家の邸宅があったのも池田山の高級住宅地の一角だ。
目線を大崎方面に振ると、クリスチャン系お嬢様学校の清泉女子大学のキャンパスがあり、その辺りが島津山と呼ばれる高台で、その名の通り島津公爵邸の跡地が大学のキャンパスになったもの。
さらにその先は、嘗てソニーの本丸があった御殿山エリア。
御殿山の名は、徳川将軍家が鷹狩の折りに休んだ品川御殿があったことによるもので、問題なく五反田からの徒歩圏ではあるけれど、ここまでくるともうさすがに五反田ではない(笑)。
足を向けたのは、池田山の邸宅街。
ぷらっと徘徊してから、桜田通り方向へ急坂を下りていく。そこで見つけたのが、”特製自家製麺つけそば中華そば”と示す看板です。
壁の額には、麺づくりとスープづくりに関する思いが綴られている。毎朝店内でつくる麺は、保存料・着色料を使用せず、かん水や塩分も控えめだという。
スープも鶏ガラ、豚骨、道南昆布、椎茸、四種類の節とふたつの産地の煮干を使って煮出しており、業務用スープは勿論のこと、化学調味料に頼らないスープとなっているという。
まずは黄色が目立つボタンをポチとした「濃厚和風特製中華そば」。でろんと大判のチャーシューにふたつ割した煮玉子、海苔をトッピングするのが、特製であるらしい。
ずいっと目線を近づけると成る程、スープの濃厚さがよく分かる。トッピングのチャーシューに乗り上げたスープの縁がこんもりとしてる。
トンコツの白濁濃度と鶏の脂と節の三重奏が繰り出す濃度が決して野卑に感じさせないまとめ方にはなっている。
一番最後の後口はちょっと纏わりつく感じもあるけれど、うん悪くない。
かん水控えめの自家製という麺は黄色味を帯びていて、例えばつけ麺「隅田」の麺を端正にした感じ。
旗の台「ぶらいとん」の麺にかなり近いものという印象だ。
こんな濃度のスープに合わせようと思うとこの手の麺になるでしょか。
別の夜には入口脇にある製麺室を覗き込んでから薄紫色のボタンをポチとする。製麺機を製作する工場は国内に幾つくらいあるのかなぁなんて思いつつ。
これまた濃度どっぷりのスープにチャーシューが浮かぶ、というより載っている。そもそもが濃密なスープゆえ、辛味も含む味噌の風味はやや押され気味。
ココのあたりはちょっくら「ど・みそ」とコラボしてもいい部分かもしれません。
もっとも、これ以上濃くしてどうしようって話でもあるかもね(笑)。
やっぱりこのあたりがスタンダードなんじゃないかと「あっさり和風中華そば」。ところがパッと見は、なかなかに濃密な表情も窺わせるドンブリだ。
流石にチャーシューに乗り上げる現象は観察出来ないゾと誰にともなく報告しつつ(笑)、蓮華を動かします。おお、成る程、濃厚と謳うドンブリとの比較もある所為か、軽やかにして程よい凝集感をもっていただける。
中野「青葉」にオリジンを想い浮かべつつ、素直に旨いと頷きます。
池田山の眼下につけそば中華そばの看板を掲げるは、
「浜屋」という自家製麺の。自家製麺がすっかり珍しいものではなくなった昨今ですが、それによって「開花楼」あたりの製麺所もよりプロとしての気構えを強くしているんじゃないかなぁなんてふと思ったりなんかして。
「浜屋」は茨城県北相馬郡利根町に本店があるそうで、五反田店は我孫子店に続く第3号店であるようです。
「浜屋」五反田店
品川区東五反田4-10-5 [Map] 03-3441-3335